施主さんは住居学の先生。今回訪問の植(うえ)和紙工房さんとはお知り合いで、いわば施主ご指定です。
主寝室とロフト付の子供部屋、トイレに和紙を張っています。
トイレには珪藻土を混ぜて漉いた和紙を使用。
和紙部分は表装職人さんによる張り込みで、周囲だけにのりを付ける「袋張り」、和紙の柔らかさを生かします。継ぎ目は手漉きの証です。
奈良県東部中山間地域は自然環境、歴史、伝統産業文化が揃った癒し系リゾートエリアとして
観光にも力を入れています。
近鉄橿原神宮前駅から車で小一時間、吉野川の
ヘアピンカーブが目印の国栖(くず)の里に工房があります。
右側の建物が工房。
川沿いの斜面で原料のコウゾの木を栽培しています。コウゾは1年物の幹を使います。古い株には切った跡がたくさん見えています。
紙になるのはコウゾの皮の部分。幹を蒸して皮をはぎ、表面の黒い皮はこそげ落とします。
白い皮は流水でさらし、ごみを丁寧に取ります。
一旦干したコウゾの皮は、もどして石灰を入れ大釜で煮たあと、たたく工程に進みます。
白い皮をたたいてほぐしたコウゾの繊維。今は機械でたたきます。
水とコウゾの繊維、糊空木(のりうつぎ)の根からとったとろみをつけるネリなどを入れて、繊維が均一になるようクシ型の撹拌器でよく混ぜます。
後継者の息子さんの作業を見守る植さん。
見学の日は葉書を
漉いていました。
薄手の無地の白は表装の裏張りに使われるもので32cmx1.45m。これが一番難しいとのこと。
住宅で使われた和紙は上のクリーム色のもの。
ピンク系のは珪藻土入り。いずれも32cm×1m。
コウゾの黒皮の小片を散らしたもの。
国栖の里のいろいろな工房で作られた製品が展示された
物産館、紙漉きの体験設備もあります。
植和紙工房のコーナー。
和紙をたずねての訪問記はいかがでしたでしょうか。
今回訪問の2か所は一見対照的に見えますが、どちらも和紙の魅力をもっとたくさんの人に知ってほしい、
身近に楽しんでほしい、という気持ちが強く感じられました。
さて次回はしばらく続いた内装材を離れて、キッチンを取り上げてみたいと思います。
(2011.08.11更新)