前回は「時間経過」を考えた住宅設計をご紹介しましたが、今回は「生活スタイル」を考えた住宅設計をご紹介したいと思います。生活スタイルと言っても国内・国外はもちろん、都市と地方でも違います。また同じ地域でも、生活環境によって千差万別です。その中から、ここでは今後広がるであろうと思われる生活スタイルの住宅設計例を紹介したいと思います。

二世帯近居スタイル
以前にもご紹介しましたが、一人っ子が多くなり親世帯の近くに住む子世帯が増えています。よく「スープの冷めない距離」と言いますが、最近では「窓を開けて見える距離」というのも珍しくなくなってきました。奥さん方の親の近くになる場合が多く、昼間は親の家で過ごし、夜は家にお土産(おかず)と一緒に戻る感じでしょうか。昔は敷地も広かったので土地を分筆して子世帯にというのがありましたが、いまは近所に住むケースが多いので、かえってそれがいい距離感を保つことになっているようです。この生活スタイルを想定した親世帯・子世帯それぞれの住宅設計を考えると、面白いプランニングが出来ます。例えば、親世帯の家は子供部屋が不要なので代わりにダイニングを充実させて、二世帯が一緒に利用出来るようにします。そうすれば子世帯の家は個室を充実する事が出来たり、趣味の部屋が取れたり、多彩なバリエーションをもたせる事が出来ます。
DINKSスタイル
雇用制度の充実もあって、近年は夫婦で働いている家庭が多く、DINKS(Double income no kids)と言われる子供がいない共働きの世帯も多数います。その中でも職種が違って、生活時間帯の全く正反対の夫婦もいます。私の友人のバーテンダーなどはまさしくそうで、仕事柄帰宅するのは朝方になり、出勤前の奥様が朝食を取る隣で彼は夕食を取るスタイルになっていました。そこで彼には、ダイニングを挟んで暗い部屋と明るい部屋の二つの寝室を設けるプランニングを提案しました。午前中に睡眠を取るご主人の寝室を暗くすることで、日光に邪魔される事なく、ストレスのない生活できるよう工夫しました。
また出張が多く、お互いほとんど会えないDINKS世帯に提案した例があります。それは着替えなどをパッキングしやすくするため、WIC(ウォークインクローゼット)を大きくとるだけでなく(夫婦でほとんど会えないという生活状況を考慮して)WICを含めた全ての部屋を可能な限り、リビングに直結させるようにしました。そうすれば一人の時間でも、個室の扉を開放すればリビングが視界に入り、孤独感を和らげることができます。また、リビングを通じて他人の気配をすぐに感じ取れるので、夫婦がすれ違う時間をなるべく少なくする事が出来きます。
家事効率スタイル
休日が固定している家庭で、平日は朝から晩までみっちりと働き、週末は別荘に行ってゆっくりと過ごす家族もいます。その場合庭等は手入れが大変ですし、前回にもあった様にリビングが南に面する必要もありません。少しの時間で効率よく家事ができるように、ダイニング中心の生活スタイルとし、便利な機能を追加してあげるほうがいいのではないでしょうか。以前上記ケースに似た家族から依頼があったときの事を例に挙げると、家事をする時間が全くない夫婦だったので、洗濯物を部屋干しするためのスペース兼収納(干したところからそのまま着る)を設けたところ非常に重宝されました。既存の考え方でいくと無精に思われるかもしれませんが、ストレスなく生活できるように、すなわち、生活スタイルに合うように設計してあげる事が大事なのです。

以上で見てきたように、生活スタイルというのは社会と関わっている人間がどのように動いているかを表しています。今では当たり前になっている生活スタイルも、昔では考えられないケースも多々あります。ですから、今の「時間」だけを考えると、今後対応できなくなります。大切なのは、その時代その時代の生活スタイルを都度分析しながら住宅をつくる事で、快適なストレスの無い住宅が出来るのではないでしょうか。

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