今回は土地の形、すなわち敷地形状から住宅を考えてみましょう。一般的にいい土地といわれるのは、南向きで矩形(長方形)であるケースが多いのですが、これから建てる住宅のことも含めて考えると一概には言えません。阪神間などに多く見られる南面に傾斜している宅地であれば、常に前後に陽があたり最適ですが、平坦な土地の場合は北側が日陰になることが多いのです。また、矩形に整備された宅地に建物を建てる場合、周りも同様な宅地が多くなり、似たような間取りの家が建つと、同じような位置に窓ができますので、光は入ってきますが視線が隣地とバッティングし、気を使って生活しないといけなくなるのです。例えば、少し宅地どうしをずらすことによって南北とも光が入りやすくなり、また窓からの視界が開けます。快適に住むことと、きれいな敷地形状は必ずしもイコールではありません。

少し変形した土地

上の写真の敷地に建った建物のパース

売りやすい土地の形状は、敷地の値段を少しでも高くするための形でもあります。建てやすい形状は建築コストを下げてくれるので良い事ですが、建てやすいということは(もちろんすべてそうではありませんが)簡易な建物になってしまいがちです。日本の場合、土地があまりにも高額なため、建物にかけることのできる額が少なくなってしまいます。そうすると、土地を優先的に考えて建物は消耗品(スクラップ アンド ビルド)という考え方になってしまいます。そもそも宅地とは、住宅と土地がセットになってはじめてそのいい関係が快適な生活をおくるベースになっているのではないでしょうか。

どこでも同じ形の土地が広がると、どこに建てても同じような形の住宅が増えてくるのは当然です。少し変形した敷地であるとコストはかかりますが、知恵を絞りどのように住もうかと住宅に対して考える機会が増えてくると思います。土地に対しての意識が働くということは、(極論ではありますが)その土地を愛していくことになるのではないでしょうか。もちろん整形な土地であればいうことはなく、それ以外の選択肢が無くなることが「住宅に対する考え方」を狭くしているのではないでしょうか。

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