前回は敷地形状から住宅を考えてきましたが、今回は敷地と周辺環境との関係性から考えてみたいと思います。

街中で住宅を建てる場合、よほどの豪邸でない限り隣地との関係が重要になってきます。例えば、朝起きてリビングの前のカーテンを開けると隣の家のトイレが見えてしまう。また、隣の敷地との間に高低差があり、窓を開けると隣地の屋根しか見えない、といったことになると、どれだけ素晴らしい間取りの住宅でも魅力は半減してしまいますよね。

私は住宅の設計を始めるとき、敷地自体というよりはむしろ、隣地との状態を把握することに時間をかけています。例えば、隣地とどれくらい高低差があるのか、隣の建物の開口部の位置や築年数はどうか、近くの空き地にどのような建物が建ち得るのか、など色々思考を巡らせます。


借景を取り入れた「御影の家」のテラス/写真:岸田貴仁
街並みの保存と協調の「池田の家」/写真:岸田貴仁

そして時間に余裕がある場合は周辺の模型などを作って、さらに周りの状況分析をしていきます。そうすることにより周辺環境を取り込んだプランニングが可能になります。たとえば、朝日が入る方向が限られているのであれば、その一瞬の光を部屋の奥まで届くようにするにはどのような開口部を設ければ適当か、隣の庭が見えるところにリビングを持ってくればゆとりある空間になるのではないか・・・などなど、周辺の環境から住まいをデザインすることが出来るのです。

日差し、風、音、など自然環境は周辺の建物の状況によって変化していきます。その変化に対応でき、近隣と共存できる住宅を設計することで一つの敷地に縛られた狭い生活空間ではなく、隣の庭が借景出来るなど幅広い範囲で生活空間を展開出来るのです。

また街並みについても、既存の景観として美しいものがあるのなら、それを継続して発展させていくように心がけています。逆に無秩序になっているのであれば、指針としての景観を周囲に提案すれば良いのです。
土地に住むということは、その街の一部として、住人の一人として、共に生きることを考えなければいけません。住宅はその大きな環境の一部です。近隣に配慮し、そして近隣から恩恵を受ける。そのような関係が強いては周辺環境および生活空間を快適にするのだと思います。ビジネスだけでなく住宅も「 ウィン ウィン(相互利益)」の関係が幸せを呼ぶのだと思います。

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