いろいろな壁仕上げの中でも、塗り壁には別格の趣があります。
自然素材のやさしさと日本の風土に合った快適さ、職人さんの手で一面ずつ仕上げられる満足感は他の仕上げ材にはない贅沢さです。
今回は、伝統的な工法を継承する工房と、新しい試みに挑戦する企業の2ヶ所を訪ねました。
工房の1階には材料や道具、塗り見本などが
たくさん置かれています。
試し塗りで色や表面の質感を確認します。現場や季節に合わせてそのつど調合に工夫が必要とのことです。
大釜で煮ているのはぎんなんと呼ばれる海草。しっくいのつなぎに使われる糊は天然の海草のりです。
伝統的な土壁の作りです。柱と柱の間を小舞竹と呼ばれる竹を細く割ったものを組み、荒壁を塗って中塗り、上塗りで仕上げます。
きずりと呼ばれる細長い板を隙間を空けて打ち付け、下げおを付けて下塗り、中塗り、上塗りと仕上げます。
ラスボードは塗り壁材の脱落や割れ、ひびの発生を防ぐために、表面に小さなくぼみをつけた石膏ボード。塗り壁用下地として一般的に多く使われています。
同じ系統の色でも産地によって微妙に違ってきます。化学合成の顔料は一切使わず、天然の色土のみで着色するのがさくあん流。
漆喰壁の材料の石灰とスサ。
スサはつなぎとして入れる麻の繊維。袋に入っているのが下塗り用で、手の上にある白いのが上塗り用。初めて見る繊細で上質なものです。
見学者の質問にやさしく説明してくださる工房主の萩野さん。伝統の塗り壁を多くの人に知ってもらいたいと積極的に見学を受け入れておられます。
割り箸のような竹に釘と麻布が付いたものはノレン。柱と塗り壁との間にすき間ができないよう、あらかじめ柱の際に打ち付けておくもの。
ひも状の麻苧(あさお)の先に釘の付いたものはヒゲコと呼ばれ、下地に打ち付けてひび割れや脱落を防ぎます。
「長いものはこうして使う」と実演中。
いろいろなコテ。手前の二つはじゅらく壁の仕上げに使われるコテで、小型で刃が厚く重みがあり、その重みを利用して仕上げるとのことです。