第9回 京指物の技術を活かした照明器具 No.1

指物(さしもの)は木工製品のうち箱や照明器具など身の回りの調度品を、釘などを使わず木工の細工だけで作り上げる技術とされています。
中でも京指物は公家文化、茶道文化に育まれた洗練された繊細な趣を作りこむ伝統工芸です。その技術を活かして照明器具を作る(株)興石さんを訪問しました。

京都市内の少し北寄り、北大路通りに面してショールームがあります

バス停の前にあるモダンな建物は数寄屋建築で有名な中村外二工務店とその中の家具・照明器具を扱う(株)興石のショールームです。
建物の1F右側が照明器具のショールーム。数寄屋の空間に合う照明を作るためにこの部門が誕生しました。
店内には茶室仕立てのスペースがあり、自然光と和紙を通した暖かい光で気分が落ち着くやわらかな空気を感じられます。

棚に並んだ照明器具を説明して頂きました

わずかに裾広がりのセードの陶筥(とうばこ)スタンド。ベースの陶器は紫野和久傳(わくでん)のお弁当の器。紫野店開店の時、食事で頂いた陶筥で作りました。
京都迎賓館のために作られた多面体のブラケット(デザイン日建設計)。
底辺を90°に接合する所には契(ちぎり)と呼ばれる三角形の薄板が差し込まれています。
斜めに接合する所では小さな部材がさらに複雑に組まれています。

素材はおもに無塗装の吉野杉、和紙は美濃紙を使っています

塗装する場合はヒノキやヒバを使います。取手付のスタンド2台はべんがらに墨を混ぜた渋いえんじ色。
華やかさのあるペンダントは漆塗り。曲線が連なる細工は大変手間がかかるとのこと。
サッカーボール型ペンダント。見た目よりは易しく作れるそうです。
作り方を検討するための模型。

デザインはシンプル、すごいワザを何でもないように見せるのが京風

右下のスタンドは曲げた薄板の木目が光に透けてやさしい感じ。人気だそうです。
大きな楕円のペンダント。楕円の木型を作り、竹の細工や和紙を張る部分は専門のところに頼むそうです。
顧客の要望で実現したコードのないスタンド。光源は電池で灯るキャンプ用LEDランプを使用。
ポイントは脚。この細い脚の中を電気のコードが通っています。

京指物の技術を活かした照明器具はいかがでしたでしょうか。
次回は作業場の様子や実際の空間に置かれた納品例を見せていただくことにしましょう。

(C) ABC HOUSING

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