伝統のこころとわざを再発見 第10回 信楽焼きでつくる現代の水琴窟 No.2

前回は製品のいろいろを紹介していただきましたが、今回は工場の様子を見せていただきましょう。

工場は信楽駅からほど近く、窯元が並ぶ一角にあります

工場内にはたくさんの作業途中の製品が並んでいます。左手前が手洗い鉢、右側が水琴窟の壺。モーターの電源コードを通す穴が見えます。
照明器具も作っています。スリットからの光が床や壁に光と影の模様を描きます。
焼成窯が2基。白く見える耐火煉瓦の台ごと窯の中に入ります。今、窯詰め作業の最中です。

実際に作業するところを見せていただきました(手洗い鉢の例)

粘土を混ぜる器械。季節や天候により水の量を加減します。
作業は立った姿勢でスタート。直径10cm長さ1mくらいの太い紐状の粘土を手作業で積み上げます。
必要な粘土量が積みあがったら今度は座って形を作る作業にはいります。
ろくろで形を整えていく作業は時々物差しで寸法を確認する以外は全て感覚によるそうです。

「琴音」の壷は3名の経済産業省認定信楽焼伝統工芸士によって作られています

取材の日作業を見せていただいた社長の今井宏重さん(雅号:重蔵)、弟さんの今井晃治さん(雅号:日光)、従業員の岡本公延さん(雅号:一鉱)の3名です。
重蔵窯はもともとガーデンファニチュアや傘立、火鉢など大物が得意。一鉱さんは社長の大物に憧れてこの道に入ったとか。
奥に「琴音」、手前の壺は雨水をためる「信楽くん」。かつて土中に埋める本物の水琴窟の壺を作っていました。

手洗い鉢にも力を入れています

シンプルでモダンなイメージの中に信楽焼らしい温かみのある手の跡を見せた一押しのメビウスシリーズ。
利休信楽と呼ばれる技法を用いた手洗い鉢。千利休が信楽焼の素朴さが気に入り陶工に指図して茶道具を作らせたものが今に伝わっています。
これも利休信楽、黄金焼締め。他にも炎木灰や青古信楽、黒天目藁灰などいろいろな種類があり「琴音」にもこれらの技法が使われています。

現代の水琴窟を作る信楽の重蔵窯さん訪問記はいかがでしたでしょうか。本物の水琴窟の壺を作っていた技が響きのよい「琴音」の壺に活かされているのだと納得しました。

取材協力
(C) ABC HOUSING

TOPへ戻る ▲