
近年、カーボンニュートラルなど環境配慮の観点から、省エネ住宅に関する補助金が増えてきました。そこで今回は「子育てグリーン住宅支援事業」の概要や補助金額を紹介します。これから住宅購入を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
子育てグリーン住宅支援事業とは?概要について詳しく解説

子育てグリーン住宅支援事業は、省エネ住宅の新築や住宅の省エネリフォームを支援する目的で設置されました。国の予算を基に支援される補助金であるため、おおまかな申請期限は決められているものの補助上限に達したら終了となります。
そのため、購入する住宅メーカーやリフォームを依頼する業者等とスケジュールを確認することがおすすめです。ここからは、子育てグリーン住宅支援事業の制度趣旨や概要について解説します。
子育てグリーン住宅支援事業の制度趣旨
子育てグリーン住宅支援事業は、国土交通省と経済産業省、環境省が連携して取り組む制度です。国土交通省が公表している子育てグリーン住宅支援事業に関する資料によると、制度の目的として次のように紹介されています。
本事業は2050年カーボンニュートラルの実現に向け、新築住宅について、エネルギー価格などの物価高騰の影響を特に受けやすい子育て世帯などに対して、「ZEH水準を大きく上回る省エネ住宅」の導入や、2030年度までの「新築住宅のZEH基準の水準の省エネルギー性能確保」の義務化に向けた裾野の広い支援を行うとともに、既存住宅について、省エネ改修等への支援を行う事業です。
引用元 : 国土交通省 子育てグリーン住宅支援事業について
なお、子育てグリーン住宅支援事業における子育て世帯とは、18歳未満の子を有する世帯です。また、若者夫婦世帯とは夫婦のいずれかが39歳以下の世帯を指します。
ZEHとは?エコだけでなく節約にもつながる
子育てグリーン住宅支援事業の補助金対象条件として、ZEHレベルを有することが求められています。ZEHとはゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、太陽光発電などでつくるエネルギーと、家庭で消費されるエネルギーの収支を実質ゼロ以下にする住宅のことです。
ZEH住宅は補助金が受けられるだけでなく、住宅の設備等によってエネルギーがつくられるため、長期的にみると光熱費の削減につながります。さらに、新築住宅や注文住宅でZEHにする場合、住宅ローン控除の対象となるローン残高の上限が引き上げられます。
また、住宅ローン契約でフラット35を利用する場合は金利引き下げの対象にもなるため、住宅購入でZEH以外を選ぶよりも税制面や金利で優遇されます。
さらに、ZEHは断熱性が高いという特徴もあるため、冬場のヒートショック防止になるなど家族の健康を守れるでしょう。このほかにも、ZEHでは太陽光発電などでエネルギーを作り出せるため、災害時に停電になった場合でも有効です。
このように、ZEHは補助金のためだけではなく、長く住み続ける家として適しています。
子育てグリーン住宅支援事業の補助対象
子育てグリーン住宅支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯が住宅の新築や住宅リフォームをする場合に補助対象となります。ただし、住宅リフォームに関しては、子育て世帯や若者夫婦世帯以外も対象です。そのため、対象となるリフォームを行う場合であれば、世帯は関係なく支援を受けられます。
子育てグリーン住宅支援事業・対象要件と補助金額

子育てグリーン住宅支援事業の対象となる要件と、それぞれの補助金額について解説します。
子育てグリーン住宅支援事業の補助対象となる条件
新築住宅の場合
子育て世帯や若者夫婦世帯が、自ら居住することを目的として注文住宅を建築する場合や新築住宅を購入する場合、その建物は次の条件を満たすことで補助対象となります。
- ●2024年11月22日以降に対象工事に着手していること
- ●建築する住宅がGX志向型住宅(※)、長期優良住宅、ZEH水準住宅のいずれかであること
- ●床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であること
- ●土砂災害特別警戒区域等の立地等除外要件に該当しないこと
※GX志向型住宅とは、ZEH基準を大きく上回る省エネ性能を持ち、脱炭素化を目指した住宅のことです。GX志向型住宅なら子育て世代に限らずすべての世帯が対象となります。
これらの要件は、住宅の種類(注文・分譲・賃貸)によって変わるものではありません。高い省エネ性能と一定の居住面積を確保しつつ、適切な立地に建築されることを求めるものであり、詳細については個別の規定を確認しましょう。
リフォームの場合
子育て世帯や若者夫婦世帯に限らず、既存住宅のリフォームを行う場合、その工事内容は次の条件を満たすことで補助対象となります。
- ●2024年11月22日以降に対象工事に着手していること
- ●リフォーム工事が、必須工事①開口部の断熱改修、②躯体の断熱改修、③エコ住宅設備の設置のうち2種以上を実施するものであること(Sタイプは①~③の全てを実施)
- ●附帯工事として、④子育て対応改修、⑤防災性向上改修、⑥バリアフリー改修、⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置、⑧リフォーム瑕疵保険等への加入も対象となり得る
- ●1申請あたりの合計補助額が5万円未満にならないこと
これらの要件は、住宅の種類(戸建、共同)によって変わるものではありません。省エネ改修を促進し、住宅の性能向上や子育てしやすい環境整備などを図ることを求めるものであり、詳細については個別の規定を確認しましょう。
補助対象となる住宅に関する詳細
注文住宅や新築住宅の購入で補助対象となるには、GX志向型住宅、長期優良住宅、ZEH水準住宅のいずれかである必要があります。
ZEHの詳細として強化外皮基準※を満たしており、かつ再エネを除く一次エネルギー消費量▲20%に適合するもので、NearlyZEH、 ZEHOrientedも含むとしています。なお、NearlyZEHやZEHOrientedとは、最も性能の高いZEHにより近づける環境性能の住宅です。
※強化外皮基準とは、建物の外皮(外壁、屋根、窓など)の断熱性能に関する基準のことです。
延べ面積は50平方メートル以上240平方メートル以下を条件としていますが、細かい面積は壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(吹き抜け、バルコニー、メーターボックス部分は除く)により算定します。なお建物内に階段が存在する場合、階段下のトイレ及び収納等の面積も含めます。
子育てグリーン住宅支援事業の補助金額
子育てグリーン住宅支援事業の補助金額は、以下のように住宅の種類によって異なります。
- ○GX志向型住宅: 1戸あたり160万円/戸
- ○長期優良住宅: 1戸あたり80万円/戸(古家の除却を伴う場合は+20万円/戸)
- ○ZEH水準住宅: 1戸あたり40万円/戸(古家の除却を伴う場合は+20万円/戸)
- ○Sタイプ: 必須工事①~③の全てを実施する場合、上限60万円/戸
- ○Aタイプ: 必須工事①~③のうち、いずれか2種を実施する場合、上限40万円/戸
これらの補助額は、住宅の省エネ性能区分と古家除却の有無によって異なり、申請にあたってはそれぞれの要件を確認しておきましょう。
子育てグリーン住宅支援事業の申請方法

ここからは、子育てグリーン住宅支援事業の申請について解説します。子育てグリーン住宅支援事業では、新築住宅の購入者やリフォームを行う住宅の所有者が自ら行う申請はありません。住宅メーカーやリフォーム業者が代理申請をします。
子育てグリーン住宅支援事業の手続きは事業者が行う
子育てグリーン住宅支援事業では、新築住宅購入者やリフォームを行う住宅の所有者が手続きをすることはありません。購入先の住宅メーカーや宅建業者、リフォーム業者が申請者となって補助金の手続きを行います。
この際、住宅メーカーや宅建業者、リフォーム業者はあらかじめ事業者登録をしておく必要があります。つまり、どの業者でも子育てグリーン住宅支援事業の補助申請ができるわけではなく、あらかじめ決められた期間内に事業者登録を済ませた業者のみが対応できるのです。
対象となる住宅を購入する場合やリフォームを行う場合であっても、対応する業者が事業者登録をしていない場合には補助金の申請自体ができないことになります。そのため、住宅購入やリフォームにあたっては、必ず業者等へ子育てグリーン住宅支援事業の事業者として登録しているかを確認しましょう。
【参考】子育てグリーン住宅支援事業・申請手続きの流れ
ここからは、子育てグリーン住宅支援事業の申請手続きのおおまかな流れについて、参考として紹介します。
- 1.施工業者(リフォーム事業者)は、申請(予約を含む)の前に事務局に基本情報を登録する
- 2.施工業者と工事発注者は、工事請負契約と併せて、補助事業の共同実施に関する規約を締結する
- 3.予約申請後3ヶ月以内(リフォーム一括申請については9ヶ月以内)、または令和7年12月31日のいずれか早い日までに交付申請がない場合は予約が取り消される
- 4.施工業者は、すべての工事の完了後に、事務局に交付申請を行う
- 5.事務局の審査が完了次第、交付決定となる
- 6.補助金は施工業者から工事発注者に還元される
子育てグリーン住宅支援事業と他の補助金との併用はできる?

ここからは、子育てグリーン住宅支援事業と他の補助金の併用について、新築住宅購入の場合とリフォームの場合に分けて解説します。
子育てグリーン住宅支援事業は国の補助金制度であるため、原則として国が実施している他の補助金制度は併用できません。自治体単位で実施している場合には併用可能ですが、その補助金に国費が充当されている場合は併用できないため注意が必要です。
自治体が実施している補助金に関しては、当該自治体窓口へ併用可能かどうかを尋ねると良いでしょう。
新築時の制度活用
新築住宅を建てる際には、子育てグリーン住宅支援事業に加えて、他の支援策も活用できる可能性があります。例えば、住宅ローン控除は、所得税・住民税の負担を軽減できる制度です。さらに、お住まいの自治体によっては、子育て世帯向けの独自の補助金制度が設けられていることもあります。
リフォーム時の制度活用
既存住宅のリフォームでは、子育てグリーン住宅支援事業の他にも、断熱改修や高効率給湯器導入などを支援するさまざまな制度があります。国だけではなく、都道府県や市区町村レベルでも補助金が用意されている場合があり、条件を満たせば複数の制度を併用できる可能性があります。
リフォームの場合は3省連携ワンストップ補助金も利用可能
対象となるリフォームを実施し、子育てグリーン住宅支援事業の補助金を受ける場合「3省連携ワンストップ補助金」の対象となることがあります。補助対象が重複していなければ、以下の補助金も同時に申請ができます。
- 1.【経済産業省・環境省】先進的窓リノベ2025事業
- 2.【経済産業省】給湯省エネ2025事業・賃貸集合給湯省エネ2025事業
- 3.【国土交通省】子育てグリーン住宅支援事業
1の補助金では、高断熱窓等の設置が対象となります。既存の窓から、高断熱窓(建材トップランナー制度2030年目標水準値を超えるものなど、一定の基準を満たすもの)への断熱改修工事が対象となります。補助額は工事内容に応じて定額補助され、補助率は1/2相当で1戸あたり最大200万円です。
2の補助金では、高効率給湯器の設置を対象としています。こちらは、一定の基準を満たした高効率給湯器の設置をする場合に補助金が受けられます。また、補助金額は機器ごとに定額が設けられており、最大20万円です。
3の子育てグリーン住宅支援事業は、国土交通省が管轄しています。3省連携ワンストップ補助金の対象となるのは、開口部・躯体部等の省エネ改修工事です。こちらは、住宅の開口部・壁等に対する一定の断熱改修や、エコ住宅設備の設置等の省エネリフォームを行う際に支援されます。詳しい補助対象や補助金等は、前述の通りです。
制度併用の注意点
複数の補助金制度を併用する場合、各制度の工事内容や実施時期のルールをよく確認することが重要です。ある制度では対象となる工事が、別の制度では対象外となるケースもあります。
また、同一工事に対する補助金の重複受給(いわゆる「二重取り」)を禁止している制度もあるため、注意が必要です。工事箇所や費用の明確な区分けが必要になることもあります。
複数の制度の利用を検討する際は、事前に施工業者と相談し、各制度のルールに抵触しないよう、綿密な計画を立てましょう。
子育てグリーン住宅支援事業・まとめ
子育てグリーン住宅支援事業は、新築住宅では子育て世帯や若者夫婦世帯のみを対象とし、1戸あたり160万円まで支援する事業です。対象となるリフォーム工事を行う場合では、子育て世帯や若者夫婦世帯も含めたすべての世帯が対象となります。
このような補助金制度を設置しているということは、国を挙げて環境性能の高い住宅への支援をしているということが分かります。これから2050年カーボンニュートラルを目指すにあたり、省エネ性能の高い住宅を増やしていくことは私たちの将来を守ることにも繋がるのです。
これから住宅購入やリフォームを検討する場合は、当記事を参考に子育てグリーン住宅支援事業の活用を検討してみてください。