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転職は住宅ローンの審査や返済にどう影響する?利用の際の注意点、必要手続きを解説

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働き方の多様化が進み、これまで一般的だった終身雇用だけでなく転職を希望する人も増えてきました。そこで今回は、転職が住宅ローンに与える影響について解説します。返済期間中の転職についてや、契約前後の転職について注意点もあわせて紹介します。

住宅ローン契約時の審査ポイント

住宅購入は大きな出費が伴うため、ほとんどの人が住宅ローン契約を検討します。住宅ローン契約は通常30年前後の長期にわたるため、契約に際して慎重な審査が行われます。

そこで住宅ローン契約を結ぶ際には、年収に対して無理のない返済が可能かどうか等いくつかの基準を設け、契約者の必要な項目について審査されます。

住宅ローンの審査項目とは

全国の銀行等を対象として国土交通省が調査・公表している「令和3年度・民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」では、住宅ローンの審査項目についてもまとめられています。調査結果報告書によると、各金融機関では以下の項目を審査対象として挙げています。

なお、項目の後に記載している数字は、金融機関が審査すると回答した割合を示しています。調査結果報告書ではこれら以外の項目も挙げられていますが、今回は9割以上の金融機関が審査すると答えた項目のみ紹介します。

民間住宅ローンで審査される項目

  •  ●完済時年齢(98.9%)
  •  ●健康状態(98.5%)
  •  ●担保評価(97.6%)
  •  ●借入時年齢(97.1%)
  •  ●年収(95.0%)
  •  ●返済負担率(94.6%)
  •  ●勤続年数(94.5%)
  •  ●連帯保証(94.5%)
  •  ●金融機関の営業エリア(92.5%)
年齢と勤務状況に関する内容は必ず審査される

住宅ローン契約時に審査される項目を見ると、年齢や健康状態に続いて「年収」「勤続年数」など勤務状況に関連する項目があることがわかります。住宅ローンの返済期間は長期にわたるため、安定した収入があることが重視されると推察されます。

年齢に関しては「完済時年齢」と「借入時年齢」が考慮されます。完済時年齢と借入時年齢のいずれも審査し、無理のない返済計画を基に住宅ローンの融資実行について慎重に進める姿勢がうかがえます。

健康状態について審査する理由は、団体信用生命保険の加入可否に関連しています。銀行など民間の金融機関で住宅ローン融資を受ける場合、団体信用生命保険への加入は必須です。団体信用生命保険とは、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合、残債が生命保険で相殺される仕組みです。住宅ローン加入時に契約できる生命保険の一種で、通常の保険加入と同様に健康状態の診査が必要です。

返済負担率とは

返済負担率とは、住宅ローン契約者の年収に対する借入総額の割合です。返済負担率は、金融機関ごとに違います。たとえば返済負担率を20%とし、年収500万円の契約希望者の場合、年間100万円までの返済額なら無理のない返済が可能とみなします。この返済負担率の返済額に含まれるローン商品は、住宅ローン以外の借入も対象です。

つまり住宅ローン審査時には、必ず他の借入状況についても申告が必要です。所定の返済負担率を上回る借入がある場合には、キャッシュフローが円滑でないとみなされ新規の融資は難しいでしょう。そのため住宅購入を意識しはじめた段階で、他のローンをなるべく完済し整理しておくと安心です。

転職が住宅ローン審査に与える影響

住宅ローン契約に際して、金融機関は契約者のさまざまな情報を基に融資の可否や金額について審査します。一般的に、契約者の勤務状況や収入面は重視されるポイントです。ここからは、転職することで住宅ローン審査に与える影響について紹介します。主に次の内容について、影響があると考えられます。

・勤続年数が浅いことによる審査否決
・転職後の年収によっては借入可能額が転職前よりも少なくなる

転職が住宅ローンに与える影響として考えられるポイント

  •  ●勤続年数が浅いことによる審査可否
  •  ●転職後の年収によっては借入可能額が転職前より少なくなる
転職後の勤続年数が浅い場合は審査への影響も

住宅ローン契約は、転職直後は審査への影響が懸念されます。転職直後の住宅ローン申し込みでは年収がはっきりしないことや、短期間で再度転職するリスクも考えられるからです。確実に住宅ローン審査を進めたい場合には、転職後数年経ってからの申し込みが安心でしょう。

金融機関によっては、転職直後であっても前職での勤務実態を示す書類等の提出により、転職による審査への影響を軽減できる場合もあります。不安な場合には、金融機関の担当者へ相談してみましょう。

転職後の年収は借入可能額が少なくなる場合も

転職後の住宅ローン申し込みでは、勤続年数が短いため収入の見込みが立てづらいです。そのため、融資金額や返済負担率といった具体的な試算がしにくいため、借入可能額を少なく提示されるリスクがあります。
このような状態を避けるためには、ある程度の勤続年数を経て具体的な収入がはっきりわかるタイミングで住宅ローン審査を受けると良いでしょう。その間に、住宅ローンに充当する頭金相当額や諸費用分の貯金を進めておくと安心です。

転職しても住宅ローン自体は借りられる

転職したら住宅ローンが借りられないわけではありません。転職で影響が考えられる内容はあくまでも住宅ローン審査項目の一部であり、その他の条件によっては融資を受けられることもあります。
詳しくは後述しますが、転職前後の住宅ローン審査に関しては金融機関によって取り扱いはさまざまです。転職することが決まった場合には、早めに金融機関の担当者へ相談しておくと、その後の流れについてアドバイスを受けられることもあります。

転職前後で住宅ローンを新規契約する際の注意点

ここからは、転職前後で住宅ローン契約を新たに結ぶ場合の注意点について解説します。転職する予定があるのに、それを伏せて転職前に「かけこみ審査・契約」をすることは契約違反になる場合があります。

事実を伏せて故意に申し込みをした場合、後で事実が発覚しペナルティを課せられる場合もあります。住宅ローン返済は長期に渡るため、安心できる返済プラン策定のためにも正しい情報での申し込みが必要です。

なお、住宅ローン返済中に転職した場合には、すみやかに金融機関へ申告することも忘れないようにしましょう。

転職が決まっている場合には転職後に審査や申込を

一般的には、転職前よりも転職後に住宅ローンを申し込んだ方が良いとされています。転職後の年収を基に、借入可能額の試算や返済計画を立てて行く方がより現実的であり堅実です。

特にヘッドハンティングなど前職よりも有利な条件で転職する場合には、転職後の収入で審査をするほうが良いでしょう。収入が多いとそれだけ借入可能額が増えるため、メリットは大きいと考えられます。

どうしても転職直後に住宅購入が必要な場合

どうしても転職直後に住宅ローンを組む必要がある場合、希望している金融機関以外の金融機関でも住宅ローン審査を受けてみる方法があります。住宅ローン審査の詳細は、一般的には金融機関ごとに差があります。そのため、同じ属性であってもA銀行は融資が否決され、B銀行では可決されるということもあり得ます。

このほかにも、民間の住宅ローンではなく、住宅金融支援機構が提供しているフラット35の審査を受けるという選択肢もあります。フラット35は銀行などが提供している住宅ローン商品とは審査基準や商品概要が少し違います。そのため、転職直後であっても審査をしてみることで解決策が見いだせるかもしれません。

仮審査と本審査の間の転職は新たに審査のやり直しになる

住宅ローンの審査は、通常「仮審査(事前審査)」を経て「本審査」へ進みます。何も問題なくスムーズに進めば、仮審査から本審査完了までは2週間ほどあれば足ります。例えば仮審査に通過し、その後本審査に進む段階で転職した場合には、新たに仮審査をし直す必要があります。これは仮審査の情報を基に本審査をするためです。

仮審査と本審査の申し込み内容に一貫性がない場合には、当然最新の情報を基に仮審査からやり直しが必要になると考えられます。
もし仮審査と本審査の間に転職が決まっている場合には、転職後の審査が良いでしょう。住宅は人生の中でも大きな買い物です。背伸びをせず、無理のない返済計画を立てて購入するためには、やはり正当な申し込みを行うことが妥当であるといえます。

住宅ローン契約後に転職した場合には金融機関へ連絡を

住宅ローン契約後、返済中に転職した場合にはすみやかに金融機関へ連絡しましょう。ほとんどの金融機関では、住宅ローン契約時の申し込み内容に変更が生じた場合には、変更手続きが必要となります。住宅ローン返済期間中の転職は、勤務先の変更に該当するため金融機関への連絡が必要です。その後、金融機関で所定の手続きを行います。

住宅ローン契約中に転職した場合に必要な手続き

住宅ローン契約中に転職した場合には、いくつかの注意点があります。まず必要なのは、住宅ローン控除に関する手続きです。個人事業主の場合は、住宅ローン控除の申請も自身で確定申告によって行うため、必要はありません。一方会社員の場合は、勤務先の年末調整で住宅ローン控除を行うため、転職によって新たに申請が必要となる場合があります。

また、転職によって年収に変化があった場合にも金融機関で手続きが必要となることがあります。転職によって収入が上がる場合は良いですが、収入が減る場合も考えられます。無理なく長期的な返済を進めるためには、住宅ローンの返済計画の見直しなども視野に入れて相談しましょう。

住宅ローン控除適用に関して勤務先へ書類提出

会社員など給与所得者が住宅ローン控除の適用を受ける場合、初年度のみ自身での確定申告が必要です。翌年以降は勤務先の年末調整で完結するため、自身で手続きをする必要はありません。

しかし、転職により年末調整を受ける勤務先に変更が生じた場合には新たに手続きが必要となります。必要な手続きは、転職の時期によって違います。

退職した同一年内に再就職した場合

年末調整は、1月1日から12月31日までを1年間として計算します。つまり、この1年の間の所得に対して住宅ローン控除の適用があります。転職に伴う再就職が、前職退職後の同一年内に行われた場合には、前職の「源泉徴収票」を新しい勤務先に提出しましょう。そのことで、1年間の収入が合算され、それに対する住宅ローン控除の適用となります。

退職した年に再就職しなかった場合

退職した年に再就職せず、年をまたいで翌年の転職となる場合には確定申告が必要です。前職を退職後に受け取る源泉徴収票などを基に、自身で確定申告を行うことで住宅ローン控除の適用が可能です。翌年以降に再就職した勤務先で、年末調整により住宅ローン控除の適用が可能となります。

返済計画の見直しが必要な場合は金融機関へ相談

住宅ローンを契約後に転職することは、誰にでも起こりうることです。その場合には、すみやかに金融機関への連絡を行いましょう。もし転職に伴う年収減などで、今後の返済計画に不安を覚える場合にも早い段階で金融機関へ相談しましょう。必要であれば返済計画全体の見直しも検討することもおすすめします。

住宅ローン返済計画の見直しは、たとえば返済期間を長くすることで毎月の返済額を減らすことができます。このほか、転職後の勤続年数が長くなった時点で、適用金利の低い住宅ローン商品へ借り換えを検討する方法もあります。いずれも早めに金融機関へ相談し、その時に一番良い方法で解決策を見つけていきましょう。

転職に伴い退職金がある場合には繰り上げ返済も

前職を退職した際に退職金をもらった場合、住宅ローンの繰り上げ返済に充当することで毎月の返済額を減らすこともできます。繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。毎月の返済額を減らすのは「返済額軽減型」です。

もちろん退職金の充当だけではなく、家計の預貯金の中から充当し繰り上げ返済も可能です。繰り上げ返済を検討する際の注意点として、繰り上げ返済の手数料を必ず確認しておきましょう。繰り上げ返済の手数料は、金融機関ごとに違います。また、1回の繰り上げ返済で充当できる金額の制限が設けられている金融機関もあります。手数料や金額の制限なども考慮し、繰り上げ返済によってどの程度の効果が期待できるのか試算してみましょう。繰り上げ返済のシミュレーション作成は、金融機関の担当者に依頼すると良いでしょう。

転職と住宅ローンの関係性・まとめ

住宅ローンの返済期間は30年前後が一般的なため、途中で転職する人も少なくないでしょう。その場合は住宅ローン控除の適用について、新たな勤務先への手続きが必要です。その際には、あわせて金融機関へ勤務先変更などの連絡を必ず入れましょう。

また、転職して収入が上がるタイミングで新たに住宅ローンを検討する人もいます。この場合、転職のタイミングによっては審査に影響することがあります。どのタイミングで審査をするのが良いのか、金融機関の担当者へ相談すると安心です。

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