「住宅ローン控除って改悪になるの?」「どこが変更になるの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、2024年(令和6年)度以降の住宅ローン控除について
- ●住宅ローン控除の概要
- ●2024年度以降の変更点
- ●住宅ローン控除を適用するための住宅性能
- ●2024年度に活用できる子育てエコホーム支援事業
を体系的に紹介します。
住宅ローン控除の仕組みや変更点を理解するためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
住宅ローン控除とは
2024年(令和6年)度には住宅ローン控除が改悪されるという噂があり、多くの住宅購入予定者や現在の利用者にとって、不安の原因となっているのではないでしょうか。
ここでは、住宅ローン控除の概要について以下の3つを解説します。
- ●所得税や住民税が控除される制度
- ●住宅ローン控除を適用するための条件
- ●住宅の種類や入居時期で控除額が変わる
住宅ローン控除の変更点を把握する前に、まずは制度について正しい知識を身に付けましょう。
所得税や住民税が控除される制度
住宅ローン控除は、自宅購入時に利用した住宅ローンの残高の0.7%を、最長13年間所得税や住民税から差し引ける制度です。
住宅ローン控除は「住宅ローン減税」とも呼ばれますが、正式には「住宅借入金等特別控除」という制度です。
適用条件を満たすことで税金の還付を受けられますが、実際に支払った税額を超える還付は受けられません。
入居から最長13年間の間、所得税の控除を受けられなかった分は住民税で補填されるため、有効に活用するための正しい知識が必要です。
そのため、控除の仕組みをしっかりと把握し、ご自身の税負担軽減につなげましょう。
住宅ローン控除を適用するための条件
住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- ●返済期間の条件
- ●入居期間の条件
- ●床面積の条件
- ●合計所得の条件
これらの要件を満たすことで、所得税や住民税からの控除が適用され、家計の負担を軽減できるようになります。
返済期間の条件
住宅ローン控除を適用するためには、返済期間が10年以上のローンを組む必要があります。
この条件を満たす住宅ローンには、金融機関から提供されるものや、住宅金融支援機構が取り扱っている「フラット35」が含まれます。
しかし、家族や親族から借入をするものは、住宅ローン控除の適用条件外です。
金融機関の住宅ローンを利用して控除を受けるか、利息を支払わなくて済むようにするために親族からの援助を受けるか、どちらが最適かを慎重に検討する必要があります。
将来的なライフプランに大きな影響を与えることになるため、適切な選択をしましょう。
利便性の高い地域で暮らせる
狭小地は通常、都心部や交通アクセスが良く、売土地の出にくい地域で多く見られます。こうした地域では、通勤や買い物時のアクセスがスムーズで快適な生活を確保できます。
地域に充実した医療機関や子育てのしやすい環境が整っているので、安心して暮らせる要素が詰まっています。保育園や幼稚園、塾や習い事先などが揃っており、通いやすい環境であるため、子どもの興味や個性に合わせた選択ができます。進学先を検討する場合も、交通機関が整備されているため選択肢が広がるでしょう。
入居期間の条件
住宅ローン控除を利用するにあたり、物件取得後6か月以内に入居することが条件となっています。
重要なのは、控除を受けるためには「自分が住んでいること」が条件であり、購入した住宅に自分自身が住む必要がある点です。
つまり、親や子どもなどの家族を住まわせる目的で購入した住宅は、住宅ローン控除の対象外です。
そのため、住宅ローン控除を最大限活用するためには、物件を購入したらすぐに引越しができるように事前に準備をしておきましょう。
床面積の条件
住宅ローン控除を受けるためには、床面積に関しても特定の条件が設けられています。
具体的には、登記簿に記載された床面積が最低50平方メートル以上である必要があり、床面積の半分以上を居住目的で使用する必要があります。
税制上の優遇を受けたい人は、この面積の条件を満たせる家づくりをしましょう。
合計所得の条件
住宅ローン控除を受ける際、その年の合計所得金額が2,000万円以下であることが条件とされています。
ここで間違えてはいけないのは、対象となるのが「年収」ではなく「所得」であるという点です。
所得とは、年収から給与所得控除など必要経費を差し引いた後の金額を指します。
この所得の合計が2,000万円以下であれば、住宅ローン控除の適用条件を満たすことになります。
税制優遇を受けるためには、自分の所得状況を正確に把握し、この条件を満たしているかどうかを確認することが不可欠です。
適切に理解することが税金負担の軽減に直結するため、所得金額に関する基準を正確に把握しておきましょう。
住宅の種類や入居時期で控除額が変わる
住宅ローン控除の適用に際しては、住宅の種類や入居時期によって、控除の対象となる借入限度額が異なることが重要なポイントです。
例えば、令和5年末までに新築の長期優良住宅や低炭素住宅に入居していれば、5,000万円を借入れた場合、年間で最大35万円の控除が受けることができました。
計算式は以下のとおりです。
- ●5,000万円×0.7%(控除率)×=35万円
しかし、この数字はあくまで最大値であり、実際の控除額は住宅の種類や入居時期によって異なります。
さらに、住宅ローンの残高は返済が進むにつれて減少し、また、控除を受けられる金額はその方が納めた所得税や住民税の額を上限とします。
このように、全ての方が最大控除額を受けられるわけではないため、自分のローン残高や税負担の条件を確認し、控除を受けられる金額を把握することが大切です。
この制度を上手く活用するためには、個々の状況に応じた適切な計画を立てる必要があります。
住宅ローン控除は改悪になった?
2024年(令和6年)度の住宅ローン控除の見直しについて「改悪」と考えている方が多いのも事実です。
しかし、制度の変更で実際に何が変わったのか、それが住宅の購入や保有にどのような影響を与えるのかをしっかりと理解すれば、制度を有効活用できるようになります。
ここでは、住宅ローン控除の変更点について、以下の内容を解説します。
- ●住宅ローン控除の変更点
- ●住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等は3年間延長される
- ●既存住宅のリフォームに係る所得税の特例措置は2年間延長される
不安を感じることなく、これらの変更をどのように自分の状況に適用できるかを理解し、住宅購入やリフォーム計画において最適な選択ができるようになりましょう。
住宅ローン控除の変更点
2022年の税制改正では、住宅ローン減税の控除率の0.7%への引き下げが大きく注目されましたが、それ以外にもいくつかの重要な変更があります。
特に新築住宅に関しては、2024年以降に入居する場合の最大控除額が下がり、省エネ基準など特定の条件を満たさない住宅は住宅ローン減税の対象外となります。
一方で、中古住宅の控除内容には大きな変更はなく、これから住宅を購入する方々は、新旧の住宅それぞれに適用される条件を理解して計画を立てる必要があります。
また、子育て世帯や若い夫婦は、令和6年に入居する場合に限り、住宅ローンの借入限度額に上乗せ措置が設けられました。
令和4年や令和5年に入居した場合の水準と同じく、控除の対象となる借入限度額は5,000万円が上限となっています。
また、合計所得金額1,000万円以下の世帯に限り、新築住宅の床面積の要件が40平方メートル以上であれば住宅ローン控除が適用されるように緩和されました。
これは、2024年までに建築確認が降りていることが条件となっています。
確かに、控除率の引き下げや一般住宅の新築が適用外になるなどの「改悪」と言われても仕方ない点はあるものの、面積の要件の緩和もあるため、該当する方にとっては改正と言えるでしょう。
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等は3年間延長される
住宅取得やリフォームに関連する資金の贈与に適用される非課税措置が、令和6年から令和8年にかけて3年間延長されることになりました。
「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等」は、特定の条件を満たす「良質な住宅」に対して贈与される資金が、1,000万円まで非課税になる制度です。
新築住宅における「良質な住宅」の定義は、省エネ性能に関する基準をZEH水準に設定し、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量等級6以上とされています。
ただし、令和5年12月31日までに建築確認を受けた住宅や、令和6年6月30日までに建築された住宅に関しては、この限りではありません。
従来の要件である断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上が適用されます。
既存住宅のリフォームに係る所得税の特例措置は2年間延長される
既存住宅をリフォームする際に適用される所得税の特例措置が、令和6年から令和7年までの2年間延長されることになりました。
この延長は、リフォームを検討している家庭にとっては改正と言えるのではないでしょうか。
特に注目すべき点は、子育て世帯や若者夫婦世帯が子育てに適した改修を行う場合、特例措置の恩恵を受けられるようになったことです。
子育て世帯や若者夫婦世帯が特例措置の対象となるには、令和6年4月1日から同年12月31日までの期間限定となります。
対象の範囲が広くなった背景には、少子化を問題視した政府の、より多くの家庭が子育てしやすい環境を整備できるようサポートするという意図が反映されています。
リフォームを検討している世帯にとっては大きなチャンスとなるでしょう。
住宅ローン控除を適用するための住宅性能とは
住宅ローン控除の適用を受けるためには、住宅の性能が大きなカギを握っています。
2024年度以降の制度の変更に伴い「改悪」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、実はこれらの変更が環境に優しい住宅の普及を促進し、長期的には住宅所有者にとってのメリットにつながる可能性があります。
ここでは、住宅ローン控除を適用するために必要な住宅性能について、以下の順に解説します。
- ●長期優良住宅と低炭素住宅
- ●ZEH水準省エネ住宅
- ●省エネ基準適合住宅
- ●一般の住宅(その他の住宅)
一般の住宅がどのようにこれらの基準から外れているのか、そしてその違いが実際に住宅ローン控除にどう影響するのかについても触れます。
変更点を正確に理解し、自分の状況に合わせた対策を図ることで、住宅ローン控除の改悪と捉えられがちな変更を、チャンスに変えることができるでしょう。
長期優良住宅と低炭素住宅
「長期優良住宅」と「低炭素住宅」は、住宅業界における二つの重要な概念で、それぞれが専門機関からの認定を受ける必要があります。
これらの住宅を建築するためには、一般の住宅よりも建築費が高くなる傾向がありますが、住宅ローン控除の借入限度額が他の住宅よりも上がります。
また、その他の補助金などを受けられるようにもなるため、長期的な目線で判断する必要があるでしょう。
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、日本で導入された住宅の品質向上を目指す制度で、耐久性や省エネルギー性などの一定基準を満たした住宅のことです。
この制度は、長期にわたって良好な住居環境を提供し、住宅市場の長期的な安定性を確保することを目的としています。
認定された住宅は、耐震性、耐久性、省エネルギー性、維持管理や更新の容易性など、厳しい基準をクリアしているものです。
長期優良住宅の認定を受けることで、控除の対象となる借入限度額が他の住宅よりも高くなります。
具体的には、2023年までの入居であれば5,000万円まで、2024年年以降の入居であれば4,500万円が借入限度額となります(子育て世帯・若者世帯は2024年に限り5,000万円)。
低炭素住宅とは
低炭素住宅とは、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する設計、建築材料、およびエネルギー源を採用した住宅のことです。
具体的には、エネルギー効率の高い建材の使用、断熱性の向上、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー源の活用などが含まれます。
これらの材料や設計を取り入れることで、低炭素住宅は他の住宅に比べてエネルギー消費を削減し、温室効果ガスの排出量を減らせます。
低炭素住宅の認定を受けることで、控除の対象となる借入限度額が他の住宅よりも高くなり、2024年年以降の入居であれば4,500万円が借入限度額となります(子育て世帯・若者世帯は2024年に限り5,000万円)。
ZEH水準省エネ住宅
ZEH水準省エネ住宅とは、ZEHの省エネ基準を満たした住宅のことです。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、家庭で消費されるエネルギー量を抑え、住宅自体がエネルギーを創出して、年間を通じてエネルギー消費量の収支をゼロ以下にすることを目指した住宅のことです。
ZEHの住宅設計は、断熱性能の高さ、省エネルギー設備の導入、そして太陽光発電など技術を組み合わせることによって実現されます。
ZEHは、エネルギー効率の高い快適な住環境を提供するだけではなく、環境負荷の低減にもつながります。
ZEH住宅では、太陽光発電システムなどによる再生可能エネルギーを導入する必要がありますが、ZEH水準省エネ住宅では導入する必要がありません。
ZEH水準省エネ住宅にすることで、控除の対象となる借入限度額が一般住宅よりも高くなり、2024年年以降の入居であれば3,500万円が借入限度額となります(子育て世帯・若者世帯は2024年に限り4,500万円)。
省エネ基準適合住宅
省エネ基準適合住宅は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」に則り、一定の省エネルギー基準に適合している住宅のことです。
省エネ基準適合住宅は、長期優良住宅やZEH水準省エネ住宅とは異なりますが、それでも高い断熱性能を有しており、エネルギー効率の良い快適な住環境を実現しています。
省エネ基準適合住宅にすることで、控除の対象となる借入限度額が一般住宅よりも高くなり、2024年年以降の入居であれば3,000万円が借入限度額となります(子育て世帯・若者世帯は2024年に限り4,000万円)。
一般の住宅(その他の住宅)
一般の住宅、すなわち「その他の住宅」と呼ばれる住宅は、これまでに紹介した住宅の基準や認定を受けていない住宅のことです。
2024年からは、この一般の住宅が住宅ローン減税の対象外となることが決定しており、この変更は2024年に入居する住宅から適用されます。
つまり、2023年内に工事が進行中であっても、2024年に完成し入居する住宅は減税の恩恵を受けられないため、注意が必要です。
制度の変更によって、将来的にはより環境に優しい、エネルギー効率の高い住宅へと市場をシフトさせる狙いがあると考えられます。
2024年(令和6年)度に活用できる子育てエコホーム支援事業とは
2024年度からの住宅ローン控除の変更が多くの方々に「改悪」と受け取られている中、子育て世帯を対象とした「子育てエコホーム支援事業」が注目を集めています。
「子育てエコホーム支援事業」は、住宅ローン控除の見直しによる不安を感じている家庭にとって、お得な支援策です。
ここでは、新築住宅の購入や既存住宅のリフォームを検討している子育て世帯が活用できる「子育てエコホーム支援事業」の概要について解説します。
新築
新築住宅を建てる際に「子育てエコホーム支援事業」の適用条件に合致すれば、住宅の種類に応じて補助金が受け取れます。
「子育てエコホーム支援事業」では、1戸あたり長期優良住宅には100万円、ZEH住宅には80万円の補助が支給されることになっています。
ただし、市街化調整区域かつ土砂災害警報区域または浸水想定区域にある住宅については、長期優良住宅は50万円、ZEH住宅は40万円が上限となるため、注意が必要です。
リフォーム
リフォームを行う際、子育てエコホーム支援事業を活用すると、対象となる工事をすることで補助金が受けられます。
例えば、外壁の断熱改修を施し、ZEH相当の性能を実現したリフォーム工事には、1戸あたり151,000円の補助金が支給されます。
さらに、家事の負担を軽減する住宅設備を導入することで、追加の補助金を受けられる場合があるため、該当するものがないか公式サイトでチェックしましょう。
例えば、ビルトイン食器洗機を導入する際には、1戸あたり21,000円の補助金を受け取ることができます。
ただし、家事の負担を軽減する住宅設備の導入を含む子育て対応改修工事や防災性向上改修工事などは、以下のいずれかの工事を行う際に同時に工事する場合のみ適用されます。
- ●開口部の断熱改修工事
- ●外壁・屋根・天井・床の断熱改修工事
- ●エコ住宅設備の設置工事
また、補助金の交付には上限があり、受け取れる金額は世帯の属性やリフォームの範囲によって異なります。
補助金の上限額は、世帯の状況や住宅購入の有無などに基づき、20万円から60万円の範囲で設定されています。
そのため、リフォームを考えている家庭は、補助金制度を利用できる工事の種類と、補助金の上限額を確認しておきましょう。
まとめ|住宅ローン控除以外の制度も有効活用しよう
今回の記事では、住宅ローン控除の概要や2024年(令和6年)度以降の変更点を解説しました。
2024年度以降の住宅ローン控除の見直しでは「改悪」と言われても仕方がない点があるものの、他の住宅取得支援の強化が図られています。
環境配慮や耐久性に優れた住宅が優遇される方向性が強化され、子育てエコホーム支援事業による新築やリフォームへの支援も拡充されます。
これらの変更を踏まえ、住宅ローン控除のみならず、さまざまな制度を活用することで、住宅の購入やリフォーム時の負担軽減につながるでしょう。
利用可能な制度についてもしっかりと調査をして、賢く利用することが重要です。