「ZEH補助金ってなに?」「ZEHのメリットとデメリットは?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、
- ●ZEHの概要
- ●ZEH補助金の概要
- ●ZEHのメリット
- ●ZEHのデメリット
を紹介します。
ZEH補助金の要件を満たすことで、最大100万円の補助金を受け取ることができます。
ZEHについての正しい知識を身に付けることで、補助金を有効活用できるようになるでしょう。
ZEHとは
ZEH(ゼッチ)とは「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を略した言葉であり、エネルギー収支をゼロ以下にすることを目指した住宅です。
現在、日本ではZEH住宅の普及に力を入れており、以下のような政府目標が掲げられています。
- ●2030年以降に新築される住宅は、ZEH基準を満たす省エネルギー性能を確保する
- ●2030年時点で、太陽光発電設備が設置された、新築の戸建て住宅が6割あることを目指す
また、政府の目標に賛同したハウスメーカーや工務店などは「ZEHビルダー」として公募され、登録されています。
ZEHビルダーとして認められるためには、2025年度までに自社が受注した住宅のうち、50~75%以上がZEH住宅となることを宣言・公表しなければなりません。
目標数値は、2020年度のZEH実績によって異なります。
そして、ZEHを理解する上で欠かせない大事な要素として「断熱・省エネ・創エネ」があります。
断熱
ZEH住宅には、外の暑さや寒さに影響を受けずに、室温を一定に保てるように断熱性能を高めることが求められています。
断熱性能を高めるためには、窓の性能を高めたり、壁に埋め込まれている断熱材の性能を高めたりしなければなりません。
省エネ
省エネを実現するためには「HEMS(ヘムス)」と呼ばれるシステムを導入する必要があります。
HEMSとは「Home Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」を略した言葉です。
HEMSを導入すると、家電や設備がネットワークを通じてつながるため、最新の利用状況を知ることができます。
そのおかげで、電気代がかさんでいる家電については利用を控えたり、電気代の安い時間帯に稼働させたりと、使用しているエネルギーを一元管理できます。
エネルギーを一元管理することで、エネルギーの無駄遣いに気付けるため、省エネにつなげることが可能です。
創エネ
創エネとは、エネルギーを創り出すことです。
創エネでイメージしやすいのは、太陽光発電ではないでしょうか。
先述したように、ZEH住宅はエネルギー収支をゼロ以下にすることを目指しているため「創り出したエネルギー>消費エネルギー」でなければなりません。
ZEH補助金(戸建住宅ZEH化等支援事業)の概要
先述した政府目標を達成するために、ZEH住宅を建てようとしている方々向けに、ZEH補助金が用意されています。
ZEH補助金(戸建住宅ZEH化等支援事業)は、対象者や住宅の性能によって、補助金の内容や金額に違いがあるため、それぞれ詳しく解説します。
性能の高さは「ZEH+>Nearly ZEH+>ZEH>Nearly ZEH>ZEH Oriented」です。
対象となる住宅
ZEH補助金の対象となる住宅は、以下の5種類です。
ZEH
「ZEH」とは年間の消費エネルギーがほぼゼロ、もしくはマイナスになっている住宅を指し、前提条件として以下の3つの要件を満たさなければなりません。
- 1.外皮と呼ばれるような、壁や窓などの建物の内と外を分ける境目の部分が、高い断熱効果を保持している
- 2.効率性の高い省エネ設備が備え付けられている
- 3.太陽光発電のような再生可能エネルギーによって、エネルギーが創り出されている
ZEH+
「ZEH+」は、ZEHの要件を満たした上で、追加で以下のような要件を満たさなければなりません。
- 1.省エネルギーをさらに実現させる為に、1/4以上の一次エネルギー消費量が削減されている
- 2.外皮の性能をさらに強化している
- 3.電気自動車を活用し、自家消費の拡大措置が取られている
Nearly ZEH
「Nearly ZEH」とは、寒冷地や多雪地域、低日射地域の住宅に限り、ZEHの前提条件を満たした上で、年間の消費エネルギーをゼロに近づけている住宅のことです。
Nearly ZEH+
「Nearly ZEH+」は、Nearly ZEHの要件を満たした上で、追加で以下のような要件を満たさなければなりません。
- 1.省エネルギーをさらに実現させる為に、1/4以上の一次エネルギー消費量が削減されている
- 2.外皮の性能をさらに強化している
- 3.電気自動車を活用し、自家消費の拡大措置が取られている
ZEH Oriented
「ZEH Oriented」とは、都市部狭小地、または多雪地域の住宅に限り、以下のような要件を満たさなければなりません。
- 1.外皮と呼ばれるような、壁や窓などの建物の内と外を分ける境目の部分が、高い断熱効果を保持している
- 2.効率性の高い省エネ設備が備え付けられている
対象者
ZEH補助金の対象者は、以下のとおりです。
- ●新築の住宅を建てようとしている、もしくは購入しようとしている個人
- ●新築住宅を販売する法人
個人も法人も対象者となりますが、個人の場合は常時居住する住宅であることが義務付けられています。
つまり、別荘やセカンドハウスは対象にならないため、注意が必要です。
場合によっては、事業完了後に住民票の提出を求められることがあります。
補助金額
補助金額は、以下の2つのパターンに分かれます。
- ●1戸あたり55万円:ZEH・Nearly ZEH・ZEH Orientedに該当する住宅
- ●1戸あたり100万円:ZEH+・Nearly ZEH+に該当する住宅
より性能が高い住宅の方が、補助金額は高くなっています。
また、ハイグレード仕様にしたり、設備を追加したりすると、補助金も追加されます。
詳しく知りたい方は、「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」のホームページを確認してくださいね。
申請スケジュール
新規で補助金の申請をする際のスケジュールは、以下のとおりです。
- ●公募開始:2024年4月26日(金)10時~
- ●公募締切:2024年8月30日(金)17時
- ●最終交付決定:2024年9月18日(水)
- ●中間報告締切:補助事業の着手日から3週間以内(※最終提出期限は2025年1月24日(金))
- ●最終事業完了日:2025年1月27日(月)
- ●完了実績報告締切:事業完了日から15日以内(※最終提出期限は2025年1月31日(金)17時)
公募対象によっては、上記のスケジュールと異なる場合があるため注意が必要です。
申請方法
「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」が提供する「ZEHポータル」を利用して、電子申請を行います。
ZEHポータルを利用する際には、アカウントの登録が必要です。
交付決定通知が届いてから着工をする必要があるため、補助金を活用する場合は着工前に申請しましょう。
申請する際には、以下の書類が必要となります。
- ●個人で申請する場合:配置図や本人確認書類など
- ●法人で申請する場合:配置図や役員名簿、財務諸表など
その他の必要書類については「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」のページをご確認ください。
ZEHのメリット
ここまで、ZEH住宅の概要を解説しましたが、ZEH住宅を建てることで、どのようなメリットを得られるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、6つのメリットを解説します。
メリットを理解することで、ZEH住宅の建築を前向きに検討できるようになるでしょう。
毎月の光熱費を削減できる
先述したように、ZEH住宅はエネルギー収支をゼロ以下にすることを目指した住宅です。
消費したエネルギーに対しては「光熱費」としてお金を支払わなければなりません。
しかし、断熱と省エネでエネルギーが消費されづらい環境を整え、さらに創エネで消費エネルギーを上回るエネルギーを作れば、光熱費を削減できます。
2023年の二人以上の世帯の光熱費の平均額は月々18,749円です。
この金額は、あくまでも二人以上の世帯の平均値であるため、世帯の人数や、地域によっても差が出るでしょう。
最近では、ロシアとウクライナの抗争などにより燃料価格が変動を受けていたため、日本は国民の負担を少しでも軽くするために「電気・ガス価格激変緩和対策事業」という補助金制度を設けていました。
しかし、この補助金制度は2024年5月までとなるため、今後の光熱費の家計負担は増える見込みです。
さらには、各電力会社も電気料金の値上げを発表しています。
その理由の一つとして考えられるのは、燃料費の高騰です。
日本は発電電力の約7割を火力発電が占めるため、火力発電に使用する燃料費が高騰してしまうと、電気代も値上がりせざるを得なくなります。
光熱費が家計に与えるダメージは、どんどん大きくなっていくことが予想されます。
その中で、毎月の光熱費が削減できるとなると、家庭が得る恩恵は大きいでしょう。
家の中が快適になる
ZEH住宅の大事な要素の1つである「断熱」に取り組むと、家の中が快適になります。
先述したように、断熱に取り組むことで、外気温の影響を受けずに、室温を一定に保てるからです。
断熱材の中にはたくさんの空気が詰まっています。
なぜ空気が詰まっているかというと、気体は液体や固体よりも熱が伝わりにくいからです。
外壁と内壁の間に、空気をたくさん含んだ断熱材を設置すると、熱伝導率が低い状態となり、外気温は伝わりにくくなります。
それだけではなく、外壁と内壁のすき間が埋まることで気密性も高くなるため、冬は暖かい空気が外に逃げにくく、冷たい空気が入りにくい状態を作り出すことが可能です。
夏はその逆で、冷たい空気が外に逃げにくく、室外の暖かい空気が入りにくくなります。
壁だけではなく、屋根や床などにも断熱材が使用されるため、部屋は断熱材に囲まれているとも言えます。
だからこそ、断熱性能を高めることで、家全体が快適になるでしょう。
災害時にも役立つ
災害時に役立つのも、ZEH住宅のメリットです。
最近では、日本の至るところで地震が発生したり、毎年台風による被害が後を絶たなかったりと、自然災害は日常に潜んでいます。
災害が起こると、電気やガス、水道などの生活インフラが影響を受けるのは容易に想像できるのではないでしょうか。
寒い時期に災害が起こってしまった場合、暖房が使えずに生死に影響するかもしれません。
そのくらい、生活インフラは生活に根付き必要不可欠なものです。
生活に大きな影響を与える生活インフラですが、ZEH住宅にすると、災害時でも生活インフラを守れます。
例えば、日頃から太陽光発電で創り出したエネルギーを蓄電しておけば、災害時には蓄電しておいた電力から必要な電力をまかなうことが可能です。
また、省エネの観点で見ると、蓄電しておいた電気を無駄遣いすることなく効率的に使えます。
さらには、断熱性が高いと、外気温の影響を受けにくくなるため、快適に過ごせるでしょう。
電力収入を得られる可能性がある
ZEH住宅にすると、高い収入を得られる可能性があります。
太陽光発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」と呼ばれるエネルギーから発電した電気を、一定の期間固定された金額で電力会社が買い取る「FIT(Feed‐in Tariff)制度」があります。
太陽光から生成されたエネルギーは、基本的には消費エネルギーに使用されますが、エネルギーが余ってしまうこともあるでしょう。
その場合に、余った電力を買い取ってもらえるのがFIT制度です。
売電方式は、先述したような余った電力を買い取ってもらう「余剰発電」と、太陽光発電で創り出した電力を全て買い取ってもらう「全量発電」方式に分かれています。
全量発電は、太陽光パネルの設置容量が50kW以上に限ります。
2024年度の1kWhあたりの調達価格は、10kW未満の場合16円、調達期間は10年です。
詳しく知りたい方は、経済産業省 資源エネルギー庁のホームページを確認してくださいね。
FIT制度は、太陽光発電をただ設置しただけでは利用できず、電力会社と契約を締結したり、経済産業省から事業計画の認定を受けたりしなければなりません。
認定を受けるためには、数カ月の時間を要するだけではなく、申請期限も設けられています。
対応が遅れないように、スケジュールを把握しながら早めに行動する必要があります。
補助金制度を利用できる
ZEH補助金で解説したように、ZEH住宅は該当条件を満たせば、補助金制度の利用が可能です。
そして、補助金制度は複数用意されています。
若者夫婦世帯、子育て世帯を対象とした「子育てエコホーム支援事業」や、CO₂の収支をマイナスにすることを目指した「LCCM住宅整備推進事業」などが補助金制度に該当します。
現在、国を挙げてZEH住宅の推進に取り組んでいるため、補助金の原資は国庫(国の資金)となっている場合が多いです。
原資が国庫となっている補助金制度は、原則として併用できません。
そのため、補助金額が最も大きい補助金制度を選ぶと良いでしょう。
しかし、自治体が用意している補助金制度の財源は自治体である場合があるため、国が用意している補助金と併用できる可能性があります。
補助金制度を上手く利用できれば、数百万円の恩恵を受けられるかもしれません。
数百万円分の補助金制度が利用できれば、資金計画も大きく変わるでしょう。
各種補助金は対象者や、申請スケジュールなども異なるため、アンテナを張りながら幅広く情報収集することをおすすめします。
ヒートショックが起こりづらい
ZEH住宅は、ヒートショックが起こりづらいと言われています。
ヒートショックとは、急な温度の変化に伴い、血圧が大きく上がったり下がったりすることで、脳卒中や心筋梗塞のような血管の病気などが起こることを指します。
冬場の入浴中にヒートショックが起こりやすいのは、温かい室内から寒い脱衣所へ移動したり、寒い浴室から熱い浴槽内に移動したりすると、血圧に負担がかかるからです。
しかし、ZEH住宅なら家中の室温が一定に保たれているため、場所による気温差が発生しにくくなっています。
そのため、ヒートショックも起こりづらいです。
ヒートショックは、浴槽の温度を低めに設定したり、浴槽と脱衣所の温度差をなくしたりすることで、未然に防ぐこともできます。
そうすれば、自分の命だけではなく、ご高齢の両親の命も守ることができるでしょう。
ZEHのデメリット
ZEH住宅には、メリットだけではなく、デメリットもあります。
デメリットを理解しておくことで、どのような対策をすれば良いかもわかるため、しっかりと確認してくださいね。
建築費が高くなる傾向にある
ZEH住宅は、建築費が高くなる傾向にあります。
なぜなら、ZEH住宅を満たすための設備や資材は高性能で、高価な物が多いからです。
例えば、経済産業省の調査によると、家庭用太陽光発電の設置費用は、1kWあたり26.1万円です。
つまり、一般的な規模である5kWの太陽光発電を設置しようとすると、約130万円の資金が必要となります。
他にも、窓の性能を上げたり、効率性の高い給湯器を入れようとしたりすると、どんどん建築費は高くなっていくでしょう。
先述したように、ZEH住宅にすることで、毎月の光熱費のようなランニングコストを下げることは可能です。
しかし、ランニングコストを下げられるような状態にするためには、初期投資が必要になります。
ZEH住宅の性能を高めようとして、あれもこれもと高性能な設備や資材を導入すると、予算を大幅に超えてしまう可能性もあります。
だからこそ、ZEH住宅に必要な設備や資材は、資金計画に収まる範囲内で検討することが大切です。
間取りや設備に制限がかかる
ZEH住宅は、間取りや設備に制限がかかるのもデメリットと言えます。
ZEH住宅には、大事な要素の一つとして「創エネ」があり、一定以上の太陽光発電を設置する必要があります。
そのため、屋根の形や設置する方角、窓の大きさ、吹き抜けに気を遣わなければなりません。
窓が大きいと、外気の影響を受ける部分が増え、室温に影響を及ぼしてしまうでしょう。
また、空間が縦に広くなる吹き抜けは、部屋が冷えにくくなったり、温まりにくくなったりする可能性があります。
設備も一定基準を満たす必要があるため、断熱性を高めるためにドアの仕様を変えたり、省エネ性能を高めるためにエアコンの仕様を変えたりする必要があるかもしれません。
しかし、住宅は人生に何度も建てるものではありません。
基本的には人生に一度の方が多く、人生最大の買い物となる方がほとんどでしょう。
だからこそ、夢や理想を叶える家にしたいと考える方が多いはずです。
ZEH住宅の基準を満たして補助金を受け取りながら、夢のマイホームを叶えるための方法を不動産会社や設計士に相談してみましょう。
メンテナンス費用がかかる
メンテナンス費用がかかる点も、ZEH住宅のデメリットです。
先述したとおり、ZEH住宅は太陽光発電や、断熱性の高い窓、給湯器などさまざまな設備や資材を用意しなければなりません。
これらは、毎日の生活の中で使うものであるため、使うほど性能が落ちてきたり、故障したりするかもしれません。
一つ一つの設備や資材も決して安いものではないため、可能な限り長持ちさせたいと考える方が多いのではないでしょうか。
だからこそ、長持ちさせるためのメンテナンスが大切です。
しかし、メンテナンス費用は数万円で済む場合もあれば、数十万円かかる場合もあるかもしれません。
それだけの金額がかかるなら、メンテナンスはしなくても良いのではないかと思う方もいるのではないでしょうか。
ですが、数万円のメンテナンスを怠ることで、完全に故障してしまい、数十万円や数百万円かけて設備を交換しなければならなくなるかもしれません。
設備の交換となると、急な出費となり、家計が大きなダメージを受けることも考えられます。
設備や資材などをより長持ちさせたいという場合には、資金計画の中に、定期的なメンテナンス費用も組み込んでおくと良いでしょう。
また、ハウスメーカーや設備メーカーによっては、無料の点検期間を設けている場合もあります。
ハウスメーカーや設備を選ぶ際には、料金や性能だけではなく、保証内容も大事にしながら検討しましょう。
発電量が変動する可能性がある
ZEH住宅は、発電量が変動する可能性もあります。
ZEH住宅に必要な太陽光発電は、名前のとおり「太陽光」を基に発電するシステムです。
そのため、太陽光の量が少ない時期には、充分な発電量を確保できません。
他にも、エリアによって、太陽光を受けにくい場合もあるでしょう。
住宅を購入する際には、充分な太陽光を確保できそうな場合でも、将来的に近くで高層マンションの建築計画がないか確認しておくと良いでしょう。
まとめ|ZEHを理解して補助金を有効活用しよう
ZEH住宅には、メリットもデメリットもあります。
デメリットがあるからダメというわけではなく、デメリットを理解した上で、どのように向き合っていくかが大切です。
ZEH住宅を理解して行動すれば、きっと後悔のない家づくりができるでしょう。
また、ZEH住宅を建てたいと思った時に、背中を押してくれるような補助金制度が日本にはいくつも用意されています。
種類も多いため、情報収集も含めると時間はかかるかもしれません。
しかし、大きな恩恵を受けるためにも、ZEHを正しく理解して補助金を有効活用しましょう。