週末の楽しみ方
週の半分は会社に勤めています。残り半分は、原稿を書いたり、料理の撮影をしたり、家で仕事をしています。
平日が仕事のスケジュールでいっぱいなので、土日は意識的に仕事を入れず、家族と過ごすことを最優先にしています。子どもたちと近所の公園に出かけたり、時間をかけて料理をしたり、絵を描いて過ごすことが多いです。
週末の夜は夫と晩酌をするのが楽しみです。写真はある日の一品。ソーヴィニヨン・ブランに、干し柿、生のオレガノ、発酵バターを合わせました。バターと干し柿の合間に、フレッシュなオレガノをかじります。これが、ビンゴ。少し酔っ払っているくらいのほうが、面白い組み合わせを発見できるような気がします。
家=人生の基盤
5年前にそれまで住んでいた神奈川の家を手放し、東京に家を買いました。和室があって、障子をあけると庭の桜が見えるところに、ひと目惚れしました。
私にとっての家は、朝それぞれの社会へ出かけた家族たちが、夕方再び戻ってきて、疲れを取ったり、明日への栄養を蓄える場所。特に、子どもが生まれてからは、彼らを健康的にのびのび育て、人生の基盤を作ってやる場所だと感じています。子どもだって、一歩外に出れば、初めて直面することばかりで大変だと思います。家に帰ればおいしいごはんがあって、機嫌のいい親がいる。そこだけは守っていきたいと思います。
時間の考え方
家事をして子どもたちの世話をしていると、あっという間に一日が終わってしまうというのが正直なところです。子どもたちが寝てからと、起きる前が、ひとりで過ごせる時間です。このときに原稿を書いたり、本を読んだりしています。
以前は、たくさん時間がなければたくさん考えることはできないと焦る気持ちがあったのですが、今は、大事なのは集中すること、そして、小さな時間を積み重ねることだと思うようになりました。「まとまった時間ができたら、あれもこれもしよう」と考えていたら、永遠に何もできません。
家のなかでは、家族で賑やかに過ごす部屋と、寝室など暗くして静かに過ごす場所のメリハリをつけるようにしています。写真は大人の寝室へと続く廊下。敬愛する写真家・松原博子さんの写真を飾っています。
落ち着くおうちの場所
1階から2階へ上がる階段です。書斎が手狭になったので、階段の壁面に自分で本棚を作りました。本を読むことが生活の一部なので、ポータブルの読書灯をいくつか持っていて、いろんな場所で本を読みます。一番好きなのが、踊り場や階段に座って読むこと。それがたとえ3ページだけでも、不思議と落ち着きます。「お母さんどこ行った?」と思ったら、だいたい階段にいます。
リビングにある鏡の周りも、好きなスペースです。家族の写真や、恩師から贈られたカード、子どもたちの力作など、ごちゃごちゃと(笑)飾っています。好きなものがいつでも視界に入るようにしていたいです。
これからの家
現在の家を少しずつ直したり手をかけながら、長く付き合っていきたいと思っています。真新しいものより、古くて味わいのあるものに惹かれます。
和室から裸足のまま庭に出られるように改装したいと計画していますし、あとは、ほとんど使っていな屋根裏のスペースを壊して、天井に明り取りの窓をつけたいと思っています。月や星を眺めてお酒が飲めたら最高です。写真のテラスで、天気のいい日は昼からお酒を飲んだり、バーベキューをしたりもします。このテラスに屋根をつけて、雨の日でも本が読めたら……夢がひろがります。家の中なのに、空と風を感じる。外にいるのに、家の中にいるようにくつろげる。そんな家に憧れます。
「140字ごはんとしての生活」
一番長い時間を過ごすのが、キッチンです。なかなか毎日几帳面に掃除はできないのですが、作業台に出していいのはホーローの取手付きの生ゴミ入れだけ!と決めて、頑張っています。キッチンが散らかっていると、料理が億劫になってしまうので。
料理の撮影や打ち合わせで来客が多いこともあって、生活と仕事との気持ちの切り替えのために、香りを活用しています。左の「シンクー」は最近よく使っている新ブランド。マッチ型のお香で、ひのきとティートゥリーの2種類の香りが入っています。他に、青森産のヒバのお香や、鎌倉「香司 鬼頭天薫堂」の白檀を気分や部屋に合わせて使い分けています。
「おススメの140字ごはん」
自粛生活をきっかけに、あらためて糠漬けに真剣に取り組んでいます。苦節ン年。無農薬の玄米を精米した際に出る糠と、塩水、辛子、鷹の爪、山椒などをブレンドして、初めて「ああ、おいしい」と心から思える味に漬けられるようになってきました。朝晩かき混ぜて、育てています。
6年前から、パルシステムの有機野菜を取り寄せています。届くのは週に一度。農家の方からのお便りも勉強になるし、それまで知らなかった野菜を知ることもできました。野菜料理のレパートリーが増えたのは、間違いなくこの宅配のおかげです。
ある週に入ってきたカブを丸ごと煮て、スープにしました。鍋に水と昆布、カブを入れて火にかけ、弱火で煮はじめます。沸騰直前に昆布を取り出し、塩をひとつまみ。カブが柔らかくなるまで煮ます。ウインナーを加えて温まったら、鶏がらスープのもとを加えて味を調えます。
休日にはよくお寿司を作ります。この日は、タコと菜の花のちらし寿司。タコは薄いそぎ切りに。菜の花はひと口大に切ってから、油をひいたフライパンで焼きます。茹でるよりも、香ばしくなっておすすめです。酢飯に生姜とみょうがをたっぷり混ぜ込んで、菜の花、タコ、炒り卵の順に盛り付けます。
最近気に入っているのが、白味噌と豆腐の味噌汁に、バターと和辛子を加えて食べるレシピ。ポタージュのようにコクがあり、胃が温まります。お酒を飲んだあとの締めにもおすすめです。