「よそから帰ってきてニュータウンに入ると、ドーンと広い道が開けていて、街路樹がキレイに並んでいる。それが私のふるさとニュータウンに対する原風景です。とにかく緑が多くて、私たち子どもが遊ぶ場所がたくさんありましたね。学校の横から細い歩道が伸びていて、車道に出ることなく団地のすき間をスルスルと抜けながら色々な場所に行けるんです。原っぱもありましたし、団地ののり面も自然を残してたっぷりととってありますから、土筆やひっつき虫なんかの雑草もいっぱい生えていて、虫捕りには事欠きませんでした。戸建て住宅地では、クルドサックと言って、わざと袋小路にしてその辺りの住人以外はあまり入って来ないようにしてあるんです。袋小路部分は車がUターンできるよう小さな広場になっていていて、子どもたちの恰好の遊び場になっています。昼間はほとんど車も入って来ませんから安全で、だから子育てにこの街を選んだというお友達もいます」。
千里ニュータウンは「実験都市」と呼ばれるほど、さまざまに新たな試みがされました。
最も特徴的なことは、全体の半分弱に値するほどの土地を公園緑地や道路などに贅沢に使い、広々とした幹線道路には街路樹を並べ、ゆったりとした緑豊かなまちに仕上げられていること。次に「近隣住区」という考え方に基づいて、徒歩で行交える日常生活圏を住区単位とし、それぞれに近隣センター(ショッピングセンター)、小学校、公園を配置。3~5住区単位で鉄道の駅を配置しました。
さらに、集合住宅街を中心に歩車分離システムが導入され、平面的にまた、立体的に歩行者と車を分離。とくに学校や近隣センター、駅などへは、それに沿って行くと、全く車に出会うことなくたどり着けるよう、歩行者専用道が配置されました。
戸建て住宅街でも住人以外の車が入って来ないようクルドサックパターンという袋小路スタイルを採用。袋小路部分には車がUターンしやすいよう小さな広場と、歩行者や自転車は通り抜けられるよう専用の抜け道がつくられました。
今となっては、綿密に練られたそんな計画など知らずに暮らしている人も多いようですが、それらは依然としてしっかりと機能しており、千里ニュータウンを住みやすいまちにしてくれているようです。
広々とした幹線道路とキレイに並んだ街路樹、当時の洗練されたデザインの団地に緑豊かな公園。これこそ、岡本さんにとってのふるさとの原風景。
団地内にもたくさんの土の場所があり、子どもたちが虫や草花とふれあうことができます。
袋小路にすることで、付近の住人以外の車の侵入を 防ぐクルドサック。車があまり入ってこないことから安全で、子どもたちにとっては、恰好の遊び場になっています。
竹見台マーケットから団地群へ抜ける歩行者専用の道。主な公共施設から住宅エリアへは、このように歩行者専用の道が配置されています。
南千里駅から竹見台へ渡る歩道橋。車道を通ることなく、駅と住宅を結んでいます。
昨今話題になっているロータリー式の交差点『ラウンドアバウト』は、千里ニュータウンでは昭和37年当時から導入されていました。