パントリーはまとめ買いした食材のストックの場や非常食を備蓄しておく点でも便利に使え、キッチンをすっきりさせるのにも一役買ってくれます。当記事では、どのようにパントリーを作るとより利用しやすいかなど間取りの実例を交えてご紹介します。
パントリーとは?
パントリーとは、キッチンの一部またはキッチンに隣接して設けられる収納スペースを指します。主に、食品や飲料、保存食・非常食などの収納に利用されることが多い空間です。
最近では、冷蔵庫を収納したり家事室を兼ねたりと、広さによってさまざまな間取りのパントリーが出てきています。
近年では断捨離がブームになり、間取りや持ち物を必要最低限に抑えた暮らしを求める方が増えています。一方、共働きの増加により、まとめ買いや災害対策意識の高まりによる非常食・飲料のストックなど、収納スペースに困っているご家庭も多いのではないでしょうか。
また、リビングからキッチンが見える対面型の間取りも最近では多く、すっきりとした印象にするためキッチンに吊戸棚を設けない場合も増えてきています。その際、収納場所の確保としてパントリーの人気はより一層高まってきています。
パントリーは、それぞれの暮らしや住宅の間取りに合わせてタイプを選択でき、キッチンをすっきりと保てて非常に便利です。しかし、スペースを確保する必要があり、パントリーを設置したことでキッチンが狭い間取りになったり、設置に費用がかかる場合もあります。
パントリーを設置する際は、メリット・デメリットを理解しておくことが大切です。どのようなパントリーにしたら家族が便利に使えるのか、住宅にかける予算や間取り、ライフスタイルなどさまざまな角度からベストなパントリーのプランを作りましょう。
パントリーの理想の広さとは?
間取りの図面づくりの段階では、どれくらいのパントリーを作れば便利に使えるのか迷いますよね。そこで、台所の間取りを作ってもらう前に、実際の暮らしを想定してパントリーに収納したいものを具体的に考えてみましょう。
パントリーに収納したいものを具体的に考える
パントリーに収納したいものの量を考える際は、家族の人数や買い物の頻度、食品以外に収納したいものを具体的に考えてみることから始めましょう。
レトルト食品や乾物など、常温で置ける食品のストックは広い間取りを必要としません。一方、使用頻度の低いホットプレートや卓上コンロなどの小型家電、冷蔵庫、オーブン、ウォーターサーバーなどの大型のものを収納したい場合、パントリーに必要な広さが変わってきます。
さらに、近頃は防災意識も高まり非常食や飲料水のストックも必要です。住宅に住む人数が多いと、非常食・飲料水のストックにある程度のスペースが必要となります。そのため、あらかじめ収納スペースを確保した間取りを計画するようにしましょう。
また、キッチンと洗面室の間にパントリーを設ける間取りにすると、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、洗剤などのストックも同時に収納できます。その結果、洗面室やキッチン収納を別々に設ける間取りよりも、住宅スペースを有効に活用できる間取りになるでしょう。
最近では、テレワークスペースとして小さめのデスクを設けるといった活用方法でもパントリーは人気が出てきています。間取りにもよりますが、キッチンが狭くならない程度にデスクスペースがあると何かと便利に使えます。
わが家に必要なパントリーの広さとは?
パントリーに収納するものを具体的に考えたら、次に図面を見ながらベストなパントリーの広さを考えましょう。間取りによってはスペースを確保できない場合もあるため、間取りを変更するかキッチンのスタイルを変更するなどして理想に近づけましょう。
食品や飲料、非常食のストックを収納したい場合、壁付けタイプのパントリーがおすすめです。0.3~1畳が一般的で、間口90~180cm、奥行き45cm程度のものが多くなっています。缶詰やレトルト食品などの小さなものは、ボックスなどを使って収納すると管理しやすいでしょう。
また、食料品などのストックの他に、日用品の収納や調理家電なども収納したい場合はウォークインタイプのパントリーがおすすめです。ウォークインタイプのパントリーは、1~2畳の間取りが一般的で、人が入るスペースを60cm程度確保する必要があります。
冷蔵庫やウォーターサーバーなどの大型家電の収納したい場合には、ウォークスルータイプのパントリーが必要です。ウォークスルータイプは2~3畳の間取りが多く、キッチンと反対側に隣接する間取り(玄関や洗面室など)と収納を兼用するスタイルがおすすめです。
パントリーの理想の間取りとは?
パントリーの理想の間取り①キッチンの動線上の間取り
パントリーの間取りとして最もベーシックなのが、キッチンと横ならびにレイアウトした間取りです。キッチンから近い距離に設置することで家事動線が短くなり、調理中に食材を取りに行く際も便利に利用できます。
また、食材や飲料のストック、キッチン家電の収納など、キッチンで利用するものだけを収納したい場合、キッチンの動線上にパントリーを作るのがおすすめです。
パントリーの理想の間取り②キッチンと洗面室の間の間取り
近年、間取りの中でもキッチンと洗面室を自由に行き来できる回遊動線の間取りが人気です。忙しい朝に家事をしながら洗濯機を回したり、身支度をしたりと便利に使える点が人気の理由です。
また、キッチンと洗面室の間にパントリーを設けた間取りは、両部屋のストックの管理がしやすいのがポイントです。買い物から帰ったときに収納する時間を短縮できたり、買い物に行くときに在庫のチェックをしやすかったりと、キッチンと洗面室の間に設ける間取りもニーズがあります。
さらに、食料品や洗剤類のまとめ買いをしているご家庭は、在庫の管理や収納場所の確保として便利に使用できるでしょう。そのため、キッチンと洗面の間にパントリーを設ける間取りはおすすめです。
パントリーの理想の間取り③キッチンと玄関の間の間取り
キッチンと玄関の間にパントリーを設ける間取りは、食料品の量が多い場合や飲料水・酒類など、重たいものを購入するご家庭にとって大きなメリットとなります。買い物から帰ってきて玄関からキッチンに食材を運び込むのは、意外と重労働です。
そこでキッチンと玄関の間にパントリーを取り入れると、買い物からの戻り際にそのまま食材を収納することができます。重い荷物を運ぶ距離が減り、楽に収納を行うことができるのが大きなメリットです。
パントリーのタイプとは?
パントリーのタイプ:壁付けタイプ
壁付けタイプのパントリーは、通常のクローゼット型やオープンタイプなど、最低限の食品などの保管におすすめです。サイズは、幅90~180cm、奥行き45cm程度のものが一般的で、キッチンの一角に作りやすいタイプのパントリーです。
また、ウォークインタイプやウォークスルータイプに比べ、最も小さな面積でパントリーづくりが可能です。そのため、「広さが限られているけれど、どうしてもパントリーを作りたい」という場合におすすめします。
この壁付けタイプのパントリーは、キッチンに近い間取りで設置することが可能です。壁付けタイプは食材などを取りに行く動線も短く、頻繁に使う食材などのストックにも便利に使えます。小さなタイプのパントリーでも、収納量が通常の収納より増えるため、設置しておくと便利です。
壁付けタイプの実例
こちらの実例は、ビルトインタイプの食器棚の横に観音扉タイプのパントリーを設置した間取りです。家電などは食器棚に収納するスペースが確保されているため、主に食料品のストックや非常食などのストックに利用できます。
また、実例のカウンターキッチンは吊戸棚がないタイプのため、パントリーで収納を確保することでキッチンをすっきりさせられます。
パントリーのタイプ:ウォークインタイプ
ウォークインタイプのパントリーとは、キッチンの横に設けられた1畳程度の小部屋タイプの収納を指します。間取りにもよりますが、パントリーの形状としては最も収納力が高いです。そのため、家族が多い場合やストックしたいものが多いときにおすすめです。
ウォークインタイプは収納力が高いですが、適当に詰め込むと何が入っているのかわかりにくくなる点がデメリットです。そのため、ストックをまめにチェックし、重複して購入するのを防止する必要があります。
また、ウォークインタイプのパントリーは空気の通り抜けがないため、食品の詰め込み過ぎには注意が必要です。パントリーに湿気が溜まらないように、キッチンの窓を開けて換気したり換気扇を設けたりと湿気対策・カビ対策を行いましょう。
ウォークインタイプの実例
こちらの実例は、広々としたキッチンにウォークインタイプのパントリーを設けた間取りです。最近では、住宅の間取りづくりでクローゼットや収納を十分にとり、家具を買い足さなくてもすっきりと暮らせるプランづくりが人気となっています。
アイランド型のキッチン下部には収納スペースを取っているため、家電や食器などの収納に不足はありません。また、リビングやダイニングからもアクセスのいい間取りにパントリーがあるため、食料品以外のさまざまな生活用品の収納にも適しています。
パントリーのタイプ:ウォークスルータイプ
ウォークスルータイプのパントリーは、洗面室とキッチンの間や玄関とキッチンの間に設けると便利に活用できます。ウォークスルータイプのパントリーの間取りも、1畳以上確保すると使いやすいでしょう。
ウォークインタイプと比べると、扉を2方向に設置する必要があるため収納力は減ります。しかし、換気や家事動線の面でも便利に使えるのがメリットです。たとえば、洗面室との間に設けると、洗剤やティッシュペーパーなどのストックができます。
また、玄関とキッチンの間にパントリーを設けると、買い物から帰ったときや宅配で食料品・飲料水など重たいものが届いた際に、短い動線で収納できます。重い荷物を運ぶ時間が減るなど隣接する空間を変えることでさまざまなメリットが期待できるのもパントリーの大きなメリットです。
ウォークスルータイプの実例
こちらの実例は、キッチンと洗面室の間にウォークスルータイプのパントリーを設けた間取りです。実例のように冷蔵庫もパントリーに置くことで、来客時でも冷蔵庫の開け閉めが気になりません。また、パントリー内に天井高の棚を設置し、細かいものをわかりやすく収納しています。
さらに、水廻り周辺も意外とストックしたいものが多く、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどかさばるものも多くなりがちです。そこで、洗面室からアクセスしやすい間取りにパントリーがあると、便利に活用できます。
パントリーを作るときに気を付けるポイントとは?
オープン収納 or クローズド収納
パントリーを作るときに、内容が見えるオープン収納か見えないクローズド収納にするかは予算にも関係してくるポイントです。
リビングから見える間取りであれば、クローズド収納にしておくとすっきりと見えるためおすすめです。オープン収納にする場合、ケースや引き出しなどを使ってすっきりと収納する工夫が必要になるため、上手に収納する自信のない方はクローズド収納が安心でしょう。
またパントリーの設置する場所によってはコンロ近くで油はねが気になるなど扉ありのクローズド収納がおすすめの場合もあります。
一方、角などリビングからの死角にパントリーを設けられる場合は、予算を抑えるためにもオープン収納にする選択肢もあります。オープン収納は扉を開けるというアクションが減り、調理中の時短にも繋がります。
扉をつけるほどではないけれど、ある程度整理して収納しておきたいという場合はサイズ違いのボックス収納で簡易的な棚を作る方法もあります。自分好みの整理整頓ができる収納を選ぶようにしましょう。
収納棚の奥行き
パントリーをつくる際に、あらかじめ固定式の棚を設ける場合もありますが、思いのほか使いにくかったという声が多いのです。例えば家電調理器などの収納幅に合わせて奥行きのある棚を作ると、奥に収納したものを見つけにくくなるといった具合に思わぬ不具合が生じることもあります。
缶詰やレトルト食品などをストックするスペースの棚は、30~45cm程度の奥行きが目安です。それ以上の奥行きになると見つけづらい、取り出しづらいといった状況になってしまうことが考えられます。
サイズや使い勝手は実際に使用してみてからわかるものも多くあるため事前に設置する場合はよく検討しましょう。
コンセント
冷蔵庫の収納を兼ねる場合、コンセントの設置はマストです。また、パントリー内にコンセントを設けることで、コーヒーサーバーや調理家電などをサクッと使用できます。そのため、あらかじめコンセントを付けておくと便利でしょう。
さらに、コンセントを多めに作っておくと、充電式の掃除機の充電スポットやレシピ検索に使うタブレットの充電場所などにも活用できます。コンセントがあることで、便利な空間としてパントリーを使えます。
換気などの最適な環境
キッチン内に壁付けタイプのパントリーを作る場合、キッチンの換気扇を利用できます。しかし、ウォークインタイプのパントリーは湿気や臭いがこもりやすいため、換気扇を付けることをおすすめします。
また、間取りとしてはキッチン横のため、湿気や温度が上がりやすくなっています。パントリーは食料品などのストックをする場所であるため、ものを詰め込み過ぎず衛生面にも気をつけて快適に利用しましょう。
パントリーの最適なサイズと間取りを考えて快適なキッチンへ
住宅を新築するときやリフォーム・リノベーションする場合、暮らしにくさをなくすことが大切です。暮らしにくさの中でも、収納の改善は非常に重要です。
中でもキッチンは米やミネラルウォーター、レトルト食品などさまざまな食品やキッチン用品をチェックしながら収納する難しいエリアです。
パントリーの間取りを考えるときには、当記事で紹介したメリットや注意点を参考に、管理のしやすい快適なキッチンを実現させましょう。