リビングは住まいの中心であり、家族が集まりくつろぎながらコミュニケーションをとる大切な場所です。しかし、リビングの広さは一概に決められるものではなく、快適で機能的なリビングをつくるには、ただ広ければ良いというわけではありません。
家族の人数や年齢、ライフスタイルや趣味、予算や敷地の条件など、様々な要素が影響します。また、リビングでの過ごし方や家での生活スタイルはリビングの広さと密接な関係があります。では、ご家族にとって最適なリビングの広さはどのくらいなのでしょうか?
この記事では、家族の暮らしにとって理想的なリビングの広さを見つけるためのヒントをお伝えします。
リビングの広さを考えるときの注意点
モデルホームや建売住宅の見学、住宅サイトの情報など、建物の間取り図に記載された畳数を見て、リビングの広さを想像するのは意外と難しいものです。その理由は、図面の表記方法が一定ではないことや、畳数だけがリビングの広さを感じる要素ではないことによります。そこでまずは、リビングの広さを考える際の注意点について詳しく紹介します。
リビングにはLDKもLDも含められることが多い
リビングの畳数の表記には、単純にリビングだけの広さではなく、LDK(リビング・ダイニング・キッチン)やLD(リビング・ダイニング)といった一体空間を合わせた広さを示している場合があります。畳数だけを見ると広いリビングを想像しがちな表記方法ですが、実際にリビングとして使える空間は異なるため注意が必要です。
例えば、間取り図のリビング部分に「16畳」と書かれている場合、それがリビング単体の広さを表しているのか、LDの広さを表しているのか、LDKの広さを表しているのかを確認しましょう。
キッチンスペースを4.5畳、ダイニングスペースを4畳と仮定すると、実際にリビングにあたる面積は以下のように異なります。
「16畳」がリビング単体の広さの場合・・・16畳
「16畳」がLDの広さの場合・・・12畳
「16畳」がLDKの広さの場合・・・7.5畳
このように、畳数の表記によっては、リビングに相当する面積が2倍近く異なるケースもあります。
リビング面積に含まれている部分を確認する
リビングの広さを見るときには、どの部分までがリビングとして含まれているか確認しましょう。その理由は「リビング面積」と一言でいっても、リビングのくつろぎ空間以外の面積も含まれているからです。
リビング畳数だけ見ると広く思えても、これらのスペースが加算されると、実際にリビングとして使える空間はもっと狭くなる可能性があります。
リビングの広さを考えたり、いくつかの間取り図を比較したりする場合には、これらのスペースを考慮すれば、実際に使える広さを正確に把握できます。
リビングの面積に含まれることが多いのは、下記のような部分です。
リビング階段の下部
リビング階段の下部がオープンスペースであれば、リビングの面積に含まれます。床面は続いているので、視界が抜けて広く見せる効果はありますが、天井の高さが低いためリビングの一部として使うには工夫が必要です。
背の低い家具や収納を設置したり小物を飾ったりしてインテリアのアクセントにするなど、有効利用できる方法を検討しましょう。
収納スペース
リビングに造り付けの収納が設置されている場合、収納面積もリビング面積に含まれます。リビングをすっきり片付けて快適に暮らすためには大切なスぺースですが、リビングとして使える面積は畳数よりも狭くなります。
収納扉の開閉スペース内には、家具を配置できません。収納の位置やサイズによってはリビングの動線やレイアウトに影響が出るので、計画時には配慮が必要です。
ホール面積
玄関ホールや廊下を極力減らしたオープンな間取りの場合、リビングとホールの間に壁がなく空間が連続している場合や、リビングの一部にホールの役割を果たすスペースが存在する場合もあります。これらの空間は、スムーズな動線確保を優先させるスペースのため、くつろぐ場所としてのリビングとは役割が異なります。
間取り図の中で動線を想像する方法としては、玄関からリビングに入るときや、リビングから他の部屋に移動するときに、どのように歩くかをイメージすることです。家具や壁などが邪魔になって回り道にならないか、他の動線と交差しないかなどをチェックします。これによって実際にリビングとして使用できる空間がどの部分になるかが把握できます。
LDKの広さにはキッチンリビングの形状が大きく関与する
キッチンとリビングが一体化したLDK型の場合、キッチンの形状によって、リビングの広さや使い勝手が変わります。
例えば、壁に沿ったI型キッチンと空間の主役となるようなアイランドキッチンでは、必要な面積も動線も大きく異なります。また、キッチンの形状によっては、ダイニングテーブルの配置が大きくせり出してくるケースなど、リビングが縦長になることもあるでしょう。
家具の配置が難しい形状や使いづらい面積が多い場合、リビング面積が広くてもゆとりのある空間とはなりません。家具を配置しやすい形状や、コミュニケーションのとりやすい形状であるかは重要なポイントです。
LDKの配置によって広さの感じ方が変わる
LDK(リビング・ダイニング・キッチン)の配置は、リビング全体の広さや使い勝手に大きな影響を与えます。特に、対面キッチンがどこに面しているかは、広さの感じ方を変える大きな要因です。
一体型LDK
一体型LDKとは、キッチンがリビングダイニングに向いている配置です。キッチンからリビングまで一つの空間としてつながっているため、リビング全体が広く感じられます。料理中でもリビングまで視線が通るので、家族のコミュニケーションを重視する方や小さな子どもがいる家庭に向いています。
L型にリビングが配置されたLDK
リビングがL型に配置されたLDKは、キッチンがダイニングエリアだけに面しており、リビングは独立しています。同じ面積の一体型LDKと比較した場合、狭く感じられるかもしれません。ただし、空間の使い分けがしやすくキッチンの匂いや音を感じづらいので、よりくつろぎ感を重視できる間取りといえます。
リビングの広さの目安
リビングの広さは、家の広さや地域の特性、家族構成などさまざまな要因によって異なります。ここでは、一般的なリビングの広さの目安を確認してみましょう。
家の延べ床面積によるリビング面積の違い
リビングの広さは、家の延べ床面積に大きく影響されます。延べ床面積の約3割がリビング面積の目安と言われており、家が広くなればなるほど、それだけリビングに使えるスペースも増える傾向にあります。例えば、延べ床面積が100㎡(約30坪・約60畳)の家であれば、リビング面積は約30㎡(約18畳)となります。ただし、他のスペースとの兼ね合いもあるので、実際にこの通りになるとは限りません。
大規模な住宅では、リビングはより広く、ゆったりとした空間として設計されることが一般的です。一方、小規模な住宅では、限られたスペースの中で、リビングの使用用途を増やすようにしてスペースを確保するなど、効率的な間取りが設計されます。
地域別にみるリビング面積の違い
リビングの広さは、地域によっても大きく異なります。都市部では、広い敷地の準備が困難なことや地価が高いことから、土地面積、建物面積ともに小さくなる傾向です。
例えば、「令和5年度 住宅経済関連データ」によると、一戸建ての平均延べ床面積は、最も広い富山県では145.2㎡、最も狭い東京都では65.9㎡との統計結果が記載されており、2倍以上の開きがあります。家の延べ床面積が大きく異なるため、それに比例してリビングの広さも変化します。
家族構成によるリビング面積の違い
リビングの広さは、家族構成によっても異なります。同居人数が多いほど、リビングの面積は広くなる傾向です。
小さな子どもや高齢者がいる場合
例えば、小さな子どもや高齢者がいる場合、リビングの広さを重視する場合が多くあります。在宅時間が長いため、リビングの居心地の良さを重視するだけでなく、子どもが広々と遊ぶスペースや、高齢者がリハビリするスペースを確保するのも大切な目的です。
子育て世帯では、子ども部屋スペースを確保するためにリビングの広さをとりづらいケースも見られます。子どもの成長に伴いプライバシーや自立性を尊重することも大切です。
しかし、その一方で、リビングが狭くリラックスしづらい場合、自室で過ごす時間が増え、リビングでの家族の交流が減ることも懸念されます。家での過ごし方や暮らし方をどのようにしたいか、家族の考え方に沿って慎重に検討すべきポイントです。
具体的な数値から考えると、30坪の家であれば20畳程度のリビングスペースを確保できます。しかし実際には、子供部屋や収納の確保を優先して12畳から16畳とする場合が多いといわれています。ちなみに、おおよそ70㎡(約21坪・約42畳)の3LDKのファミリー向けマンションのリビングダイニングを合わせた広さは、13~16畳が主流とされています。
夫婦のみの世帯の場合
夫婦のみの世帯の場合、個室の必要性が低く、リビングでの時間を重要視することも多いです。その結果、延べ床面積の中でリビングの割合は広めになる傾向があります。
また、夫婦のみの世帯は建物の規模自体が比較的コンパクトな割合が高く、リビングも同様にコンパクトにまとめるケースが多くあります。
畳数ごとのリビングのイメージ
リビングの畳数だけを聞いても広さをイメージするのは難しいので、画像を用いて説明します。
6畳のリビングのイメージ
6畳程度のリビングには、2人掛けのゆったりしたソファ、または、シンプルなものであれば3人掛けのソファが配置できます。テレビとの距離も3m程度確保できます。
8畳のリビングのイメージ
8畳程度のリビングは、3人掛けのソファにオットマンを組み合わせる、または、2人掛けソファと1人掛けソファを組み合わせるなど、柔軟な配置が可能です。極端に細長い形状でなければ、テレビとの距離は3m程度です。
12畳のリビングのイメージ
12畳のリビングでは、ピアノや子どもの机、趣味スペースなど様々な要素を追加する余裕が生まれます。
16畳のリビングのイメージ
16畳のリビングでは、大人数が集まるホームパーティなどにも対応できる広さと言えるでしょう。家具や家電の配置にも自由度が高く、リビングの一角に書斎やワークスペースを設けることも可能です。
リビングの広さを考えるポイント
一般的な4人家族の場合、リビングの広さは16~20畳が平均的とされています。しかし、リビングの広さを決める際には、家族のニーズやライフスタイルに合わせて考えることが大切です。リビングの広さを考えるポイントを4点お伝えします。
家族の人数や年齢層から考える
家族の人数や年齢層によって、リビングの広さに求められるニーズは異なります。一般的に、家族の人数が多いほど、リビングの広さも大きくなる傾向があります。先ほども説明しましたが、子どもや高齢者がいる場合はリビングで過ごす時間が長くなるため、安全性や過ごしやすさを考慮して、広いリビングが必要とされる場合があります。
ライフスタイルやリビングの使い方から考える
家族のライフスタイルやリビングの使い方も、広さを決定する上で重要な要素です。リビングの広さに応じて、家族のコミュニケーションの方法も変わってきます。広いリビングでは、同じ空間にいながら家族が各々の時間をリラックスして過ごすことができます。
ある程度のプライバシーも尊重しながら同じ空間で過ごせるので、自然な会話やコミュニケーションによって家族の絆を深めることも可能です。
一方、限られたスペースのリビングの場合、家族でいっしょにテレビやゲームを楽しむなど、時間を共有する使い方ができます。
その他にも、家族がリビングで趣味の時間を過ごしたり、リビング学習することが多い場合や、親戚や友人を招くことが多い場合など、集まる人数やリビングの使い方によって、必要なリビングの広さは異なります。
家具やテレビのサイズから考える
家具やテレビのサイズは、リビングの広さに影響を与えます。手持ちの家具や家電を使用する場合や、引っ越し後に使いたい家具の目星をつけている場合、適切な配置スペースを確保しましょう。
特にテレビは、大きさによってソファまでの適切な距離が決まっています。設置するテレビのサイズによっては、リビングの配置や使い勝手が変わる場合もあるため注意が必要です。
また、テレビに限らず、家具の前面には最低60㎝の動線を確保するようにしましょう。
家族の動線から考える
リビングの広さを考える際には、動線も重要な要素です。家具や家電の配置、通路の確保を考慮すると、リビング全体の使いやすさと快適さが向上します。
リビングが広い場合には、ソファの後ろを通る動線を設けるなど、リビングの中心部分に家具を配置して、周囲に他の部屋や玄関への出入り口を設ける配置も可能です。
一方、限られたスペースのリビングの場合には、動線はシンプルですが、空間を広く見せるために壁際に家具を寄せて、リビングの中心部を動線として利用する配置もよく見られます。無駄なスペースを作らないのがメリットですが、リビングの中心部が家族の通り道になり、落ち着かない雰囲気に感じられることもあります。家族の中でも人の往来が気になるかどうかには個人差があるため、それぞれのニーズを話し合いましょう。
広いリビングの落とし穴と注意点
広いリビングは魅力的に感じられますが、その広さによるデメリットもあります。広いリビングを持つことによる落とし穴や注意点について考えてみましょう。
冷暖房の効率が落ちる
広いリビングには、効率的な冷暖房が難しいケースもあります。スペースが広くなればなるほど、冷暖房の効率は低下しがちです。広いスペースをくまなく冷やすには、出力が大きなエアコンや暖房機器が必要であり、光熱費が増加する可能性も考えられます。
また、リビングに設置する窓の枚数も増えます。窓周りは室温が変動しやすいので、冷暖房効率を上げるには、それらを考慮した冷暖房機器の配置や家具の配置も必要です。
管理しづらくごちゃつくこともある
広いリビングを持つ場合、適切な収納や整理整頓が行き届かないと、ごちゃつきやすく維持管理が難しくなります。
リビングは家族の共有スペースですが、広いリビングでは本来、他の部屋にあるべき個人のものが、気づかないうちに持ち込まれることがあります。外出時に使用したカバンや上着、勉強道具や書類などが、ソファやテーブルの上に置きっぱなしになると、乱雑なイメージになってしまいます。リビングの広さに余裕があることで、片付けに対する意識が希薄になり、スペースが私物化されがちなので注意が必要です。
また、広いリビングを作る場合、リビングに様々な使用用途を持たせることも多いです。例えば、テレワークスペースとして使う場合は、パソコンや書類ケース、文房具などが必須です。子供の遊び場とする場合は、おもちゃや絵本を置く場所が必要です。毎日使うものは出しっぱなしになってしまいやすいので、すっきりした空間を保つのは難しくなります。
他のスペースを圧迫することもある
広いリビングを設計する場合、他の部屋やスペースが犠牲になる可能性があります。特に土地の広さに制約がある場合、建築可能な建物の床面積の上限は決まっています。そのため、広いリビングを確保するためには、寝室やキッチンなど、日常的に利用する他のスペースの広さを削らなくてはなりません。
本当にリビングを広くしても問題ないのか、他の部屋も含めたバランスや優先順位を考えましょう。
広く見えるリビングの作り方
コンパクトなリビングでもポイントを押さえれば、広く開放的に感じることができます。リビングを広く見せる具体的なポイントについて紹介します。
隣接する部屋とつなげて視線を通す
リビングを広く見せる方法の一つに、隣接する部屋とのつながりを活かす方法があります。例えば、和室や客間などを隣接した部屋との仕切りを引き戸にして、普段は開いておけば、一体空間として視線が通るので広く感じられます。
吹き抜けをつくる
吹き抜けをつくって天井の高さを利用するのも広く見せるポイントです。天井が高くなると開放感や高級感を得られるだけでなく、吹き抜けの高い位置から差し込む自然光は広さを感じさせます。
適切な収納の設置
リビングを広く見せるためには、適切な収納の設置が重要です。壁際に天井までの高さの収納を設けると、空間全体をすっきり整えられるため、リビングとして使える床面積は減っても逆に広く感じられます。収納量を確保できるので室内のごちゃつきを防止することも可能です。
さらに、一部分をオープン仕様にして見せる収納として活用すると、視線に抜けができて広がりを感じさせるほか、空間にアクセントを加えられます。また、造り付け以外の収納家具を置く場合には、高さや奥行きを合わせたものを選ぶとすっきりした印象になり、広さが感じられます。
どんなに広さがあっても、物があふれてしまえば快適に過ごすことができません。適切な収納を設置して、リビングの機能性と美しさを両立させましょう。
カラーコーディネートや照明で広さを演出する
リビングのフローリングや大型の家具に明るい色調やナチュラルな色合いを使用すると、明るく広々とした印象を与えます。同様にカーテンやラグなどの大きなリネン類は、空間の雰囲気を大きく左右するアイテムです。これらもフローリングや家具の色と同系統の色で合わせれば、部屋を広く見せる効果があります。
照明については、蛍光灯やシーリングライトだけではなく、電球色の間接照明を採用するのがおすすめです。リビングに奥行き感や温かみが出るほか、テーブルライトやスタンドライト、ペンダントライトなどを組み合わせれば、空間にメリハリが生まれます。
リビングの広さに合わせたサイズの家具家電を選ぶ
ソファやテレビのサイズを選ぶ際は、リビングの広さと調和するかどうかが重要です。大きなテレビやゆったりとしたソファは高級感がありますが、リビングの広さに対して大きすぎるサイズのものを選んでしまうと、狭苦しいイメージを与えてしまいます。十分なスペースを確保して、ゆとりのある空間づくりをするのが広く見せるポイントです。
家族がテレビを見ながら会話できるようなゆとりや、適切な視聴距離や他の家具とのバランスを考えながら配置しましょう。
まとめ
リビングの広さについて、様々な視点からお伝えしました。リビングの広さに悩んだ際は、くつろぎやコミュニケーションのスタイル、家全体のスペースのバランスを大切にしましょう。それをふまえたうえで、機能的で快適なリビングを実現するために、特に重要なのは下記の4つのポイントです。
・家族がコミュニケーションを取ったりリラックスしたりする場として、リビングでの過ごし方を検討すること
・リビングはただ広ければ良いというわけではなく、家族のライフスタイルや家全体のバランスを考慮した、最適な広さを見つけること
・間取り図で広さを確認する際には、リビングとして実際に機能するスペースを見極めること
・限られたスペースでも、間取りやインテリアの工夫次第で、広く感じるリビングが実現できること
リビングの広さは、住まいづくりの重要な要素の一つです。ご家族で住まいについて考える際には、これらのポイントをぜひ参考にして、ご自身にとって最適なリビングを見つけてくださいね。