WEBサイトや雑誌などで「セカンドリビング」が紹介されているのを見かけたことはありませんか?近年、テレワークの普及など家での過ごし方の変化によって、注目を集めている間取りです。
その注目を集める理由として考えられるのは「家族のライフスタイルや趣味に合わせた、より快適な空間を作りたい」「家族がそれぞれの自室ではなく、同じ空間で時間を過ごすことを大切にしたい」といったニーズが高まっていることではないでしょうか。
セカンドリビングは、その「リビング」という言葉の響きから、家族のリラックススペースとしてのイメージが強い空間です。しかしそのイメージにとらわれず、もっと幅広い用途で自由に設計できます。そこで今回は、どんな設計が可能であるか、「セカンドリビング」の魅力について具体例を交えながら詳しく紹介します。
セカンドリビングの魅力
セカンドリビングには多くの魅力があります。はじめに、セカンドリビングを作る具体的なメリットと検討する際の注意点について紹介します。
セカンドリビングとは
セカンドリビングとは、メインのリビングのほかに設けられる、もう一つのリビングスペースのことです。「リビング」とはいっても、使い方に決まった形態はありません。それぞれの家族のライフスタイルやニーズに合わせて、形態も用途も自由に考えられます。
もちろんメインのリビングとは分けて、家族のリラックススペースをもう一つ準備する使い方も含まれます。それ以外にも、趣味や仕事のためのスペース、来客専用のスペースとする場合もあります。
セカンドリビングがもたらすメリット
セカンドリビングを取り入れると、家族の毎日にとって多くのメリットがあります。
来客用のリビングにした場合
家で仕事をしている家族がいる場合、仕事に関する来客用として、応接間のような使い方ができます。リビングとは別の空間で対応することで生活感を感じさせず、集中して打ち合わせができるでしょう。
また、子どもの友だちが自宅に遊びに来た時に、遊び場として使う方法もおすすめです。子ども達が個室に閉じこもらずに遊ぶことができるので安心です。また、その間、他の家族はメインリビングを使っていつも通りに過ごせるので、お互い気兼ねすることもありません。
家族でリラックスする空間にした場合
メインリビングを来客時に使用し、セカンドリビングを家族だけの空間とする方法です。先ほど紹介した、セカンドリビングを来客用に使用するのとは真逆の使い方です。プライベートでの知人、友人や親戚の来訪が多い場合におすすめの利用方法です。
メインリビングで来客との会話を楽しんでいる間も、子どもや他の家族はセカンドリビングでリラックスした時間を過ごせます。
家族で楽しむ空間にする場合
家族でコミュニケーションをとったり、いっしょに趣味を楽しんだりする場所として使用するのもおすすめです。大画面を取り付けたホームシアターを作って、家族で映画鑑賞をする、テレビゲームを楽しむなどの使い方があります。
また、大きな本棚を設置して、読書したり、勉強したりするスペースにするなど、家族のニーズに合わせた様々な用途で利用できます。
集中できる空間にする場合
趣味に没頭したい時や、在宅ワークをする時、勉強する時など、家族に干渉されずに一人で過ごしたい時間もあるでしょう。そんな時にセカンドリビングは、賑わいから少し離れながらも、家族の気配を感じながら集中して取り組める場所として役立てられます。
また、WEB会議をする場所としても、周囲の生活音や家族の映り込みを気にせずに済みます。
セカンドリビングのデメリット
セカンドリビングを設置する際の最大のデメリットは、セカンドリビングを確保するために、他の部屋や収納の広さが圧迫されることです。また、設置に要する費用が掛かることも考慮しましょう。さらに、使用目的をはっきり考えておかないと、結局使わない空間になってしまう危険性があります。
これらのデメリットを防ぐためには、事前に家族で話し合いの上、セカンドリビングの使い方についての思いを共有しておくことが重要です。
後悔しないセカンドリビングを作るポイント
セカンドリビングを有効活用するためには、先ほどのデメリットを理解した上で、以下のポイントについて検討しておきましょう。
スペースとコストのバランスを考える
どのくらいのスペースであればセカンドリビングをして使えるのか、どの程度ならコストを掛けられるのかを事前に考えておくことが重要です。用途や使用頻度によって、必要な広さは異なります。またコストについて考える際には、一般的に建物代金に含まれる間仕切りや内装、建具の代金だけではなく、セカンドリビングで使用する家具や電化製品の購入費用も含めて計算しましょう。
用途を明確にする
セカンドリビングをどのように使うのか、家族でイメージを共有することが重要です。家族のニーズやライフスタイルを考慮して、できるだけ具体的に考えておきましょう。例えば、どんなシチュエーションやタイミングで、誰がメインで使用するのかなど、話し合う必要があります。
積極的に活用する意識を持っていなければ、せっかくセカンドリビングを作っても使わない空間となる可能性もあります。物置や死蔵スペースとならないためにも、用途を明確にする必要があります。
将来的な利用方法の変化を見据える
セカンドリビングを作るなら、家族のライフスタイルの変化に対応できるような設計を考えましょう。家に住み続ける長い期間で、家族構成の変化や子どもの成長によって、住まい方は変化します。使用用途の変化に合わせて間仕切りの変更が容易にできるようにしておくなど、長期的な視点で設計しておくことがおすすめです。
セカンドリビングを間取りに取り入れる際の設計ポイント
セカンドリビングをどこに配置するか、間取りづくりをすすめる際のポイントについて紹介します。
使いやすい配置と行き来しやすい動線を考える
セカンドリビングを有効活用するには、家族が自然に集まりやすい場所、行き来がしやすい動線を確保することが重要です。用途に合わせた使い勝手のよい配置を考えられれば、セカンドリビングの利用頻度が高まります。
プライバシーを確保する工夫
来客用の空間とする場合を除いて、プライバシーの確保と開放的な雰囲気を両立できる配置が適しています。例えば、メインリビングの近くや2階の階段ホールに設置する場合、目隠しできるパーティションや腰壁などで視線を遮る工夫を考えましょう。また、スキップフロアなど、高さを利用して空間を分ける方法も効果的です。
用途に合わせた機能を備える
セカンドリビングの用途に合わせた機能を充実させて、そこで過ごす時間を存分に楽しめるようにしましょう。例えば、下記のような工夫があります。
- ●シアタールームやオーディオルームにする場合は、防音性を高める工夫をする
- ●軽食や飲み物を楽しむ場所とする場合は、簡易キッチンや冷蔵庫を設置する
- ●テレワークする場合は、WEB環境や電源、収納場所を整備する
将来の変化に対応できる柔軟性を持たせる
セカンドリビングは、将来的な変化に対応できるように設計することが大切です。可動式の家具やパーティションを活用することで、家族のライフステージに応じて対応できる柔軟性を実現しましょう。
例えば、将来的に両親と同居することを視野に入れる場合は、簡易キッチンを設けられるように配管を準備しておく、個室に転用できるような間仕切りを計画しておくことが考えられます。
また、子どもの独立など、同居家族が減ることも想定されます。その場合、セカンドリビングが不要になることも考えられるので、間仕切りを追加して、趣味の部屋やゲストルームに転用することも考えておきましょう。
セカンドリビングの実例と設計ポイント
セカンドリビングの実例を設置場所や用途別に紹介します。
①リビング内にもう一つのくつろぎスペースを設ける
家族が集まるリビングの中に、2つのくつろぎスペースを設けた実例です。家族がそれぞれの過ごし方をしながらも、同じ空間で過ごせます。自然と家族のコミュニケーションが生まれやすい配置といえるでしょう。ホームパーティで大人数が集まった場合でも、参加者がそれぞれの楽しみ方を見つけやすくなります。
また、この配置のセカンドリビングは、子どものリビング学習をする場所としてもおすすめです。ある程度の年齢になると、真横について一緒に取り組むよりも、少し距離をとって見守る距離感が好ましいことも多いです。この配置であれば、メインのリビングにいながら、距離をとって見守ることができます。この場合のメリットとして、学習用具をメインリビングに持ち込まないので、メインリビングが乱雑になるのを防げること、勉強に取り組む際のオンオフの切り替えがしやすいことなどがあります。
設計ポイント
- ●家族の動線を考慮して、それぞれのリビングの配置と使い分けを考えること
- ●適度なプライバシーを保てるように、パーティションや家具のレイアウトによって視線の抜け方を考えること
- ●異なる活動を同時に行った場合、それぞれの活動の干渉を減らせるように、家具の配置や照明の配線などを工夫すること
②LDKに隣接させた仕切れるセカンドリビング
LDKとセカンドリビングを隣接して配置し、必要に応じて仕切って別々にも使用できる間取りです。LDKとの間に可動式の間仕切りやスライドドアを設置します。友人などプライベート以外での来客では生活感を隠したいものです。この間取りであれば、仕切りを開け閉めして使い分けしながら、プライバシーを守れるでしょう。
設計ポイント
- ●可動式の間仕切りや建具を使わない時に、すっきりと収納できるような工夫をすること
- ●LDKとの一体感を保ちつつ、独立した空間として利用する場合も用途を満たせる広さや配置を考えること
- ●仕切って使う場合に、両方のリビングで適切な換気や自然光が取り入れられるように、窓の配置に配慮すること
③スキップフロアを利用すれば幅広い用途で使える
スキップフロアとは、一体空間の中で床の高さに変化をつけた間取りです。広々した空間に感じさせつつ、高さの変化によって区切りのある印象になります。そのため、同じ空間にいながらも、異なる用途で使い分けたい場合にぴったりです。
例えば、子どもの遊び場として使用する場合は、メインリビングやキッチンから見える位置に設置しましょう。目の届く範囲で見守りながらも空間の区切りができます。また、メインリビングにおもちゃなど、子どものものが散乱することを防げます。
在宅ワークや趣味で使用する場合、子どもに触らせたくない作業用具もあります。スキップフロアによる段差であれば、子どもにとっても別の空間として明確に認識しやすいので、安全を確保できます。
設計ポイント
- ●どのスペースとつなげるかを検討すること
- ●在宅ワークスペースとする場合、適切な照明と作業環境、インターネット環境、電源の配置などを整えること
- ●趣味の空間にする場合、大きな作業台や収納棚などを必要に応じて準備すること
- ●子どもの遊び場や趣味のスペースとしても活用できるよう、多目的に設計すること
④リビング横のウッドデッキをアウトドアリビングに
メインリビングの横にウッドデッキを設置して、アウトドアリビングとして活用するのもおすすめです。天気の良い日は家族でランチやバーベキューを楽しむなど、自然を感じながら過ごせるスペースとなるでしょう。
また、ホームパーティの際に、それぞれのリビングを使い分けられます。参加者それぞれが、外の気温や自分の体調に合わせながら室内室外のどちらのリビングで過ごすかを決められます。どちらで過ごしても、一緒に楽しむことができるので、高齢者や小さな子どもがいる場合でも、熱中症などで体調を崩す心配を減らせます。
設計ポイント
- ●天候に左右されづらい空間とするためには、シェードや屋根の設置を検討すること
- ●開け放していても邪魔になりづらい建具を選択すること
- ●耐久性の高い床材を選び、メンテナンスのしやすさを考慮すること
- ●冬季間など使わない期間に、アウトドアリビング用の家具を収納する場所を考慮しておくこと
⑤庭に隣接させた土間リビングでペットと快適に過ごす
庭に隣接させた土間リビングを作って、庭に作ったドッグランへペットが自由に行き来できるようにする方法もあります。土間リビングにしておけば、外の汚れが室内に持ちこまれることを気にせず使用できます。散歩の動線も、庭からセカンドリビングを経由するようにまとめてしまうのも一案です。足洗い場を作って、庭で遊んだ後や散歩の後に使用できるようにすればペットとの暮らしやすさがアップします。
設計ポイント
- ●庭に面した位置に配置し、ペットが自由に出入りできるようにすること
- ●泥汚れやホコリが入りやすいので、水を使って掃除できるようにするなどきれいに保つために配慮すること
- ●寒い時期や悪天候時に外の冷気が入り込まないように、断熱性を高める工夫をすること
- ●土間部分の冷えを緩和させる対策をとり、室内に寒差が伝わるのを防ぐこと
- ●土間ではなく床材を貼る場合は、ペットにやさしい素材を選ぶこと
- ●ペット用の収納スペースや、足洗い場を設けて利便性をアップさせること
⑥ホールの一角をセカンドリビングとして活用
プライベート以外の来客が多い場合、玄関ホールの一角にセカンドリビングを作って、応接間のように使用するのもおすすめです。
来客時以外は、テレワークスペースとして使用する、読書スペースとするなど、別の用途での使用方法も検討しましょう。
設計ポイント
- ●来客時に、できるだけ他の空間が見えない位置に配置すること
- ●来客時以外に、どのような用途で活用できるかを考えること
- ●来客頻度によっては、簡易キッチン、冷蔵庫など給茶設備を検討するのもおすすめ
⑦寝室に隣接したプライベートなセカンドリビング
寝室に隣接させたセカンドリビングは、ホテルの一室のようにゆったりとした時間を過ごせるでしょう。就寝前のひと時を夫婦で過ごす空間として、より満足度の高い時間を過ごすためにひと工夫を加えるのもおすすめです。
例えば、落ち着いたインテリアや上質な家具で統一する、観葉植物を配置する、ブランケットやクッションの肌触りにこだわるなど、家の中でも特に上質な空間を目指すのはいかがでしょうか。
設計ポイント
- ●インテリアは落ち着いたトーンで統一し、リラックスできる環境を作ること
- ●間接照明を利用して、柔らかい光を取り入れるのもおすすめ
- ●音楽を楽しむ場合は防音対策を施すなど、用途に合わせた仕様とすること
⑧2階ホールの畳スペースを家族のコミュニケーション空間に
近年、間取りの優先順位を検討した結果、1階に和室を作らない間取りが増加しています。しかし、畳に座ってくつろぐスタイルに、落ち着きを感じる方も多いものです。そこで、2階ホールに畳スペースを作ってセカンドリビングとする方法もおすすめです。家族全員が集まりやすく、畳の温かみがリラックスした雰囲気を演出します。
設計ポイント
- ●畳のスペースはある程度広めに確保して、家族全員が座れるようにすること
- ●窓からの自然光を取り入れ、明るく開放的な雰囲気にすること
- ●メインリビングと雰囲気を変えて、和の雰囲気を作るのもおすすめ
⑨趣味を存分に楽しむためのセカンドリビング
セカンドリビングを、趣味を楽しむための部屋として位置付ける方法もあります。趣味のための部屋と聞くと、作業する場所やコレクションを飾るスペースをイメージされることも多いものです。しかし、もっと自由に、家族の趣味に合わせた用途で考えましょう。例えば、事例画像のように、セカンドリビングにバーカウンターを設けることもできます。お酒好きな方にとっては、本格的な「おうち居酒屋」や「おうちバー」は、憧れの空間といえるのではないでしょうか。セカンドリビングだけ、他のインテリアテイストとガラッと変えて非日常感を醸し出すのもおすすめです。配置する小物やソファの座り心地にもこだわれば、よりリラックスできる空間となるでしょう。
設計ポイント
- ●趣味に合わせた設備や仕様を整え、快適に過ごせるようにすること
- ●適切な収納スペースを確保して、すっきりした空間をつくること
⑩将来の子ども部屋をシアタールーム兼セカンドリビングに
子ども部屋が不要な期間、セカンドリビングとして使用する方法です。大型のスクリーンや音響設備などを設置すれば、家族で映画鑑賞や音楽鑑賞を楽しむ空間として利用できます。子ども部屋が必要とされる期間は、意外と短いものです。子どもの成長に合わせて部屋の用途を変えられるよう、柔軟性を持った設計を考えておけばフレキシブルに活用できます。
設計ポイント
- ●将来の変化に対応できるよう、間仕切り変更も考慮したレイアウトを考えること
- ●子どもが成長しても使えるよう、インテリアをシンプルに保つこと
⑪地下室の防音性を生かしてシアタールームとして活用
セカンドリビングで映画鑑賞を楽しみたい場合は、地下室に配置するのがおすすめです。地下室は防音性が高く、日差しも入り込まないのでシアタールームにぴったりの空間です。
設計ポイント
- ●温度や湿度を快適に保つため、空調設備や換気設備を整えること
- ●防音パネルを使用して、他の部屋への音漏れを防ぐこと
⑫2世帯住宅でも家族だけの時間を楽しむ空間に
2世帯住宅で、家族そろった暮らしは賑やかな毎日を過ごせます。しかし、生活の時間帯がずれている場合も多く、音や話し声などに配慮しながら暮らす必要があります。そんな時にセカンドリビングがあれば、プライバシーを保ちながら、気兼ねせずに過ごすことができます。セカンドリビングは、2世帯住宅特有の音の問題を回避して、家族全員が快適に過ごすためにもぴったりです。
設計ポイント
- ●共有スペースとプライベートスペースのバランスを考慮すること
- ●寝室との配置に配慮して、音漏れ防止の工夫をすること
- ●閉鎖させすぎない空間とすること
まとめ
セカンドリビングは、家族のライフスタイルやニーズに合わせて自由に設計できる空間です。セカンドリビングについて、重要なポイントをまとめると以下の通りです。
- ●セカンドリビングを計画する際は、どんな使い方をしたいか用途を明確にすること。
- ●家族の状況や時間帯に応じて、多目的に利用できるように工夫すること
- ●家族が集まりやすい動線上に配置し、パーティションや家具レイアウトの工夫によって、適切なつながり具合を調整すること
- ●間取り全体のうち、どのくらいのスペースをセカンドリビングとして使えるのか、コストアップはどのくらいまで許容するのかを検討すること
- ●無駄なスペースとならないよう、将来的な変化を見据えた柔軟性をもって設計すること
セカンドリビングの大きな魅力の一つは、家族が共有スペースにいながらも、それぞれの時間を楽しめることです。それにより、家族のコミュニケーション頻度を自然と高められる効果が期待できます。
今回紹介した実例や設計のポイントを参考に、セカンドリビングを間取りに取り入れてみてはいかがでしょうか。