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長期優良住宅のメリットって?合わせて知りたいデメリットや申請の流れと注意点も解説

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長期優良住宅とは、長く良好な状態で住み続けられる高品質な住宅です。この住宅にはさまざまなメリットがありますが、手続きに手間や時間がかかるなどの注意点もあるのです。そこで当記事では、長期優良住宅のメリット・デメリットや申請手続きなどを詳しく解説していきます。

長期優良住宅とは?

長期優良住宅とは、長期優良住宅の認定制度の基準を満たした高い性能が備わった住宅のことです。長期優良住宅に認定されると、住宅ローンの金利優遇やさまざまな税の優遇措置を受けられます。当記事では、この長期優良住宅についてメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

長期優良住宅はいくら費用が必要なのか、減税の対象となる条件はどのようなものがあるのかをまとめていきますので、ぜひ参考にしてみてください。まずは、長期優良住宅の仕組みについて理解をしていきましょう。

長期優良住宅の目的

長期優良住宅の認定制度は、「優良な住宅を手入れしながら長く大切に使う」というストック型社会への転換が目的とされています。ストック型社会とは、社会資本や個人資産を長寿命にして資産の世代間蓄積を図る社会のことです。

そのため、長期優良住宅は認定されて終わりではなく、計画的なメンテナンスで建物が長期的に維持管理される制度といえます。

長期優良住宅の主な認定基準

長期優良住宅として認定されるための基準には、以下のような項目があります。

長期優良住宅の認定基準
劣化対策 数世代にわたり、住宅の構造躯体が使用可能(通常考えられる維持管理条件下で、構造躯体が少なくとも100年程度使用できること)
耐震性 極めてまれに発生する地震に対し、継続利用できるよう改修の容易化を図ること(耐震等級2以上または、免振建築物であること)
維持管理・更新の容易性 構造躯体より、耐用年数が短い内装や設備の維持管理(清掃・点検・補修)などが簡単にできる措置が取られていること
可変性 居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること
バリアフリー性 共用部分に、将来のバリアフリー改修に必要なスペースが確保されていること(共同住宅)
省エネルギー性 断熱性能など、基準を満たす省エネルギー対策が取られていること
居住環境 地区計画、景観計画、条例による街並み等の計画、建築協定、景観協定等が区域内にある場合、これらの内容と調和を図ること
住戸面積 良質な居住水準を確保するために、必要な規模を有すること(戸建て住宅の場合は75㎡以上で1つの階が40㎡以上)
維持保全計画 将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が立てられていること
災害配慮 災害発生のリスクのある地域では、そのリスクに応じて所管行政庁が定めた措置を講じること

長期優良住宅のメリット

長期優良住宅に認定されると、さまざまな経済的メリットを受けられます。どのようなメリットがあるか、一般住宅との仕組みの違いなども一緒にみていきましょう。

住宅ローン減税で優遇される

住宅ローン減税は、住宅ローンの年末残高の0.7%を最大13年間所得税から控除する制度です。所得税から控除しきれない場合、翌年の住民税からも一部控除されます。

また、2022年(令和4年)・2023年(令和5年)に入居する場合、一般住宅の借入限度額は3,000万円ですが、長期優良住宅に認定されると5,000万円に引き上げられます。

この結果、長期優良住宅認定されたときに年末の住宅ローン残高が上限額の5,000万円であると、最大で0.7%分の35万円が還付されるというわけです。住宅ローン減税を受けるための長期優良住宅の借入限度額は、入居年度ごとに以下の通りとなっています。

住宅ローン減税を受けるための長期優良住宅の借入限度額

  •  ●2022年(令和4年)・2023年(令和5年)入居:5,000万円
  •  ●2024年(令和6年)・2025年(令和7年)入居:4,500万円
住宅ローン減税が適用される主な条件

新築で住宅ローン減税を受けるための主な条件は、以下の通りです。

住宅ローン減税を受けるための条件

  •  ●自らが居住するための住宅であること
  •  ●床面積が50㎡以上
  •  ●合計所得金額が2,000万円以下
  •  ●住宅ローンの借入期間が10年以上
  •  ●住宅の引き渡し日または工事完了の6か月以内に入居
投資型減税を受けられる

住宅ローンを利用せずに長期優良住宅を取得する場合、住宅ローン減税が利用できません。しかし、長期優良住宅を自己資金のみで取得した人は、投資型減税制度で所得税が控除されます。

所得税から控除されるのは、標準的な性能強化費用相当額(4万5,300円×床面積)の10%です。この標準的な性能強化費用相当額とは、長期優良住宅の基準を満たすためにかかった費用のことで、控除対象の上限は650万円となります。

投資型減税の計算例

たとえば、床面積が120㎡の場合、減税額は「4万5,300円×120㎡×10%=54万3,600円」という計算になります。なお、投資型減税は1回だけの控除ですが、所得税から引ききれない場合は翌年の所得税から控除されます。

投資型減税が適用される主な条件

投資型減税を受けるための主な条件は、以下の通りです。

投資型減税を受けるための条件

  •  ●自ら居住かつ所有するための住宅であること
  •  ●長期優良住宅取得して居住
  •  ●住宅の引き渡し日または工事完了の6か月以内に入居
  •  ●床面積が50㎡以上
  •  ●合計所得金額が3,000万円以下
  •  ●店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
登録免許税の税率引き下げ

登録免許税とは住宅を取得したときの登記にかかる税金で、税額は土地や建物の固定資産税評価額に税率を掛けて求めます。

また、長期優良住宅を取得すると登録免許税の税率が引き下げられます。2024年(令和6年)3月31日までに新築された住宅の、登録免許税の税率は以下の通りです。

登録免許税の税率
一般住宅 長期優良住宅
保存登記 0.15% 0.1%
移転登記(戸建て) 0.3% 0.2%

たとえば、建物の評価額が3,000万円の長期優良住宅の保存登記にかかる登録免許税は、3万円(3,000万円×0.1%)です。

固定資産税の減税期間の延長

新築住宅は建築後一定期間、固定資産税が1/2に減額されます。また、長期優良住宅(戸建て)は一般住宅より減額される期間が長くなります。

固定資産税の減税期間

  •  ●一般住宅:新築後3年度分
  •  ●長期優良住宅:新築後5年度分

なお、減額される対象は居住部分の床面積120㎡までの部分です。

住宅ローン金利で優遇される

長期優良住宅の取得に「フラット35」を利用する場合、借入金利が一定期間引き下げられる「フラット35S」のAプランが適用されます。

「フラット35」とは、民間金融機関と住宅金融支援機構の提携による、最長35年の全期間固定金利の住宅ローンです。全期間固定金利の住宅ローンでは、ローン契約時に完済までの借入金利と総返済額が確定します。

また、現在のような超低金利の時期に全期間固定金利で住宅ローンを組むと、今後金利が上昇した場合も同じ金利が適用され続けるため有利です。

「フラット35S」のAプランの適用金利は?

2022年(令和4年)10月現在、「フラット35」の取扱金融機関が提供する最も多い金利は、返済期間15年から20年で年1.32%、21年から35年で年1.48%です。

また、「フラット35S」のAプランの場合、当初10年間「フラット35」の金利から0.25%引き下げられます。つまり、年1.32%であれば年1.07%、年1.48%であれば年1.23%が適用金利となります。

地震保険料が割引される

長期優良住宅に認定された建物は、耐震等級2または3に該当します。耐震等級2の場合は地震保険料から30%の割引が適用され、耐震等級3または免震建築物であれば50%割引となります。この地震保険料の割引を受けるためには、以下のような確認資料の提出が必要です。

地震保険料割引の適用に必要な資料

  •  ●住宅性能評価書
  •  ●技術的審査適合証
  •  ●認定通知書
  •  ●長期使用構造等である旨の確認書
補助金を受けられる

長期優良住宅を建てると、地域型住宅グリーン化事業の「長寿命化」に関わる補助金として、最大140万円を受け取れる可能性があります。ただし、この補助金を受けるには、事業の採択を受けたグループに属する中小工務店で家を建てる必要があります。

長期優良住宅のデメリット

先述したように、長期優良住宅には多くのメリットがあります。一方、いくつかのデメリットもあるのです。そこでここからは、長期優良住宅のデメリットについて解説していきます。デメリットもしっかりとおさえて、長期優良住宅の仕組みをより理解していきましょう。

申請に時間と費用がかかる

長期優良住宅を建てる仕組み上、着工前に認定を得なければなりません。そのため、一般住宅を建てるよりも着工までに時間がかかります。

この認定における所管行政庁の審査には、数週間から1か月かかるとされています。また、登録住宅性能評価機関による長期使用構造等であるかの確認が必要な場合もあるので、しっかりと余裕を持って準備しましょう。

申請にかかる費用

申請・審査の際には、所管行政庁ごとに定められた申請手数料が必要です。申請手数料の目安は5万円から6万円かかるので、こちらもデメリットといえるでしょう。

また、住宅性能評価機関に確認を依頼すると5万円程度の費用がかかります。通常、申請手続きは住宅メーカーや工務店が代行するため、10万円程度の代行手数料をみておく必要もあります。

建築コストがアップする可能性がある

長期優良住宅は、一般住宅に比べて長期の使用に耐えうる高性能住宅です。そのため、一般住宅より建築コストが高めになるといわれています。具体的にいくら必要かは住宅メーカーや工務店によって違いがありますが、おおむね一般住宅の1割増しと考えておきましょう。

ただし、コスト増をカバーするために税制優遇などのサポートが受けられるので、トータルでは大きな費用負担にならないと考えられます。

認定後も基準を満たさなければならない

長期優良住宅の認定を受けた住宅は、完成後も着工前に提出した維持保全計画に則って、点検や補修を実施しなければなりません。また、メンテナンスを実施した際には記録を残す必要もあります。

さらに、定められたメンテナンスを怠ると、認定が取り消されることもある点はデメリットでしょう。認定が取り消されると、税制優遇などを受けていた場合には金銭の返還を求められる可能性があるため、注意が必要です。

しかし、一般住宅であっても建築後のメンテナンスは必要なことです。そのため、必要な保全を計画的に行える点は長期優良住宅のメリットとも考えられます。

長期優良住宅申請の流れ

長期優良住宅の認定を受けるためには、着工前に所轄行政庁へ申請しなければなりません。ここでは、申請手続きの流れを解説します。

申請に必要な書類

長期優良住宅の認定申請に必要な書類は、主に以下の通りです。

長期優良住宅の認定申請に必要な書類

  •  ●長期優良住宅建築等計画に係る技術的審査依頼書(技術的審査を依頼する場合)
  •  ●認定申請書
  •  ●維持保全計画書
  •  ●適合証(登録住宅性能評価機関に技術的審査を依頼した場合)
  •  ●設計内容説明書
申請手続きの流れ

長期優良住宅の申請から認定までの流れは、以下の通りです。

長期優良住宅の申請手続きの流れ

  1.  1.事前の技術的審査の申請
  2.  2.適合証の交付
  3.  3.所管行政庁に申請
  4.  4.認定通知書の交付
事前の技術的審査の申請

建築主等の申請依頼者は、登録住宅評価機関へ事前の技術的審査の申請を行います。

適合証の交付

登録住宅性能評価機関で認定基準を満たしていると評価された場合、適合証が交付されます。

所管行政庁に申請

長期優良住宅の認定申請書類一式に登録住宅性能評価機関からの適合証を添付し、所管行政庁に申請します。

認定通知書の交付

所管行政庁が技術的審査を行い、認定されると認定通知書が交付されます。

長期優良住宅を建てる際の注意点

マイホームの取得は、一生に一度のことなので多くの注意点があります。特に、長期優良住宅は注意すべきポイントがいくつかあるので紹介していきます。

長期優良住宅に実績のあるハウスメーカー・工務店に依頼する

長期優良住宅は一般住宅と違い、一般住宅にない手続きや建築後の長期的な維持管理が必要です。そのため、長期優良住宅の実績の豊富なハウスメーカーや工務店に依頼すると安心でしょう。

また、ハウスメーカーや工務店の中には、長期優良住宅の認定基準をほぼ標準仕様で備えている会社もあります。このような会社に依頼すると、高くなりがちな長期優良住宅の建築費用もおさえられます。

さらに、手間のかかる申請手続きも任せられるので、着工までの準備もスムーズです。建築後の維持管理についても長期的なフォローが期待できます。

工事着工前でないと申請できない

長期優良住宅に認定されるためには、建築工事着工前の申請が必要です。長期優良住宅の仕組みとして、いくら認定基準を満たす家を建てたとしても建築後には申請できません。

また、長期優良住宅は一般住宅と違い、手続きが多くて時間がかかります。そのため、希望する時期に入居したい場合はプランをしっかり立てて早めに準備しましょう。

コストと税制メリット等の費用対効果を見極める

長期優良住宅には、申請費用や基準を満たすための建築費増加など、一般住宅にはない費用がかかります。その分、税制優遇などを受けられますが、費用対効果の見極めは大切です。

また、コストやメンテナンスに手間暇をかけることによって、住宅の良好な状態が長期的に維持されます。そのメリットに対してかかるコストが見合わないと考える場合は、別の住宅を選ぶほうがよいかもしれません。

高品質に長く住める長期優良住宅を検討しよう

長期優良住宅は、高品質な住宅を手入れしながら長く住み続けるための制度です。一般住宅よりも認定申請や維持管理の手間や費用がかかりますが、税制優遇などによるサポートも受けられます。

当記事で紹介した長期優良住宅の仕組みや対象となる減税を理解して、理想のマイホームを手に入れてください。また、長期優良住宅を建てる際は、手続きや維持管理にも強く技術力の高いハウスメーカーや工務店を見つけましょう。

ABCハウジングには多彩な住宅メーカーの提案するモデルホームが勢ぞろい。
一度にいろいろなモデルホームを見比べたり、体感できるから、
理想の住まいがきっと見つかります。