まずは、建水分神社のお膝元、「水分(すいぶん)地区」のだんじりが、御旅所前の坂の下からゆっさゆっさと左右に揺れながら、上がって来ました。先頭に立ってだんじりを曳くのは祭り衣裳に身を包んだ16歳~30歳くらいまでの各地区の青年団。
「よっさい よっさい よっさいこーりゃ!」景気の良い曳き唄の合間に威勢の良いかけ声が響き、祭り気分を盛り上げます。
まずは、水分地区のだんじりが御旅所前の坂をゆっくりとのぼってくる
鐘と太鼓だけのシンプルなお囃子にのせて、独特の曳き唄で宮入り
御旅所に到着すると、まずは神様に一礼。そして、だんじりの見せ場です。最初はゆっくりと曳き唄のリズムにのって神様の前を行ったり来たり…。徐々に勢いを増し、やがて御旅所いっぱいに暴れ回ります。「差し上げ」「横しゃくり」「縦しゃくり」「ぶん回し」…時間にして10分程度。町中を曳行する時は岸和田のだんじりのようにカーブを全速力でやりまわしたりはせず、ゆっくりと練り歩きますがこの時ばかりは、勢い良く暴れます。やがて穏やかになり、所定の場所へ。すると、次の地区のだんじりが宮入り…これが繰り返されます。
だんじりをウィリーさせる「差し上げ」というパフォーマンス。この時「さっしあげーてー!」というかけ声が飛ぶ(森屋地区)
動きに反して横に揺らす「横しゃくり」はかなりの重労働(森屋地区)
シーソーのように縦に揺らす「縦しゃくり」(北加納地区)
神社を起点に川上から順に ①水分 ②森屋 ③川野辺 ④二河原辺 ⑤桐山 ⑥芹生谷 ⑦中 ⑧神山 ⑨寛弘寺 ⑩白木 ⑪長坂 ⑫今堂 ⑬南別井 ⑭北別井 ⑮寺田 ⑯南加納 ⑰北加納 ⑱東板持 ⑲下河内
19台ものだんじりが宮入りする祭りは他に例がなく、だんじり愛好家たちが、カメラでその勇壮な姿を追いかけます。
地区によってはレディースを引き連れて宮入り(神山地区)
地車と書いて「だんじり」と呼びますが、地元ではそのまま「ぢぐるま」と呼ぶ人も少なくありません。全国にある山車(だし)の中でも、独特の破風屋根を構えたものを「だんじり」と呼びほとんどが大阪、兵庫に集中していますが、岡山や滋賀、三重あたりでも見られるのだそう。
買えば数千万は下らないというだんじりは、簡単に新調できないため古くから受け継がれてきているものが多く彫り物や幕の中には、江戸後期や明治初期のものもあり、文化財としての見応えもあります。南河内のだんじりらしく、楠木正成・正行親子の別れの逸話を描いた太平記の名場面「櫻井の別れ」の幕や彫り物も見られます。
楠木正成公の「櫻井の別れ」を描いた幕(桐山地区のだんじり)
義経とからす天狗の鞍馬山での修行の場面
全ての宮入りが終わったのは15時30分頃。19台ものだんじりが所狭しと並んだ光景は圧巻です。遠い地区では、朝8時からだんじりを曳き始めるそうなので、すでに7時間以上経っていることになります。宮入りが終わると、御神輿の前で、御旅所の儀が執り行われます。実りに対する感謝の気持ちを神様にお伝えする祝詞があげられると、各地区の代表が頭を垂れて耳を傾けていました。
19台のだんじりが、御旅所に集結する光景は圧巻
19台、全てのだんじりの宮入りが完了すると御旅所の儀が執り行われる。